17日から、約4万人の医療従事者に対する新型コロナウイルスのワクチン先行接種が始まった。すでに世界では接種者が3000万人を超えるが、気になるのは副反応だ。約40年にわたりワクチン開発に従事している奥田先生に聞いた。
新型コロナのワクチン接種は、感染症蔓延防止のために行う予防接種法上の「臨時接種」として、妊婦を除く16歳以上には接種する努力義務が課される。強制ではないが、企業によっては社員に接種を促すケースも出てきそうだ。
【Q】ワクチンの副反応、なぜ起こる?
【A】「ワクチン接種において、副反応がないケースはありません。たとえば、ファイザー社やモデルナ社が開発したワクチンは、メッセンジャー(m)RNA(細胞やウイルスの中にある遺伝情報をコピーし、タンパク質の合成で指令を出す物質)を打つことになりますが、人体に存在しない異物が体内に入るわけですから、アレルギー反応が出る人はいます。重篤な場合はアナフィラキシーが発症しますが、アドレナリン(ボスミン)などの筋肉注射をすることで対処できます。しかし非常にまれです。ワクチンにはリポソームという免疫賦活剤なども含まれるため、軽い症状なら倦怠感や発熱、筋肉痛などが接種後1日目から約40%の人に起こるとのことですが、数日で治ります」
アナフィラキシー症状は接種後30分以内に起きることが多いため、会場には待機場が設けられる。厚労省は、先行接種した医療従事者の接種後28日間の体温の変化や倦怠感の有無などを記録。一般接種に向けて公表される方針だ。
【Q】一般的なインフルエンザワクチンと比べて副反応の割合が高いのはなぜ
【A】米疾病対策センター(CDC)の報告(1月現在)によれば、アナフィラキシー症状は100万回に11回の割合だ。
「インフルエンザのワクチンの接種では、アナフィラキシーの症状が出る割合は100万回に1・3回とされています。これは『皮下注射』か『筋肉注射』かの違いもあります。インフルエンザは日本では皮下注射で行われています。皮膚を少しつまみながら、注射針を斜めに浅く刺しますが、免疫作用は弱い分、副反応も痛みや痒みがほとんどで、重篤な状態になりにくい。一方、今回の新型コロナウイルスのワクチン(mRNAワクチン)は筋肉注射による接種です。皮膚の表面に対してほぼ垂直に針を刺しますが、もともと海外では一般的で、治験も筋肉注射で行ったから。皮下組織より深い部分に刺すため、免疫作用は強くなります。その分、副反応のレベルも上がりますが、有効性も高い」
日本が皮下注射を原則としているのは、1970年代に筋肉注射が原因で、大腿四頭筋拘縮症の患者が約3600人報告されたからだ。
【Q】インフルエンザに比べて有効性は?
【A】ファイザー社の「mRNAワクチン」は90%以上、モデルナ社は同ワクチンの有効性は94%と公表。アストラゼネカの「ウイルスベクターワクチン」は82%と少し低い作用。インフルエンザワクチンに比べて極めて優秀な効果だという。
「インフルエンザワクチンよりも重症化を防ぐ可能性は高いと考えています。インフルエンザワクチンは、mRNAワクチンのように細胞内で病原体タンパクを人工的に作り出すワクチンと違い、完全に殺してしまったウイルスで抗体を作る不活化ワクチンです。A型、香港型、ロシア型などは変異も激しいので、接種しても有効性はせいぜい4、5割とされています。個人的には、インフルエンザワクチンを接種するくらいなら、新型コロナワクチンを接種するほうが意味があると考えています」
最新のキングス・カレッジ・ロンドンの研究では、英国の国民保健サービス(NHS)を通じてワクチンを接種した人の3人に1人が何らかの軽い副反応があったという。また、副反応を感じた割合は、3週間後に行われる2回目の接種のほうが高かったとしている。
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