湿布薬は貼りすぎると危ない!吐血して搬送されたケースも

適正な量を適正に使わないと副作用も…
適正な量を適正に使わないと副作用も…(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナ禍で腰痛を訴える人が増えているという。テレワークで座っている時間が増えたり、外出自粛による運動不足が影響したりして、ストレスや不安感も原因になる。腰に痛みを感じると、まずは「湿布薬」を貼るという人は多いだろう。しかし、正しい使い方をしないと深刻な事態を招きかねない。

 腰痛だけでなく、肩こりや筋肉痛があると、患部にとりあえず湿布薬を貼って様子を見る。ほとんどの人にそんな経験があるはずだ。

 さまざまなタイプが市販されている湿布薬はドラッグストアでも手軽に購入できるだけに、安易に何枚もペタペタと貼ってしまいがちだが、甘く考えてはいけない。

 岡山大学病院薬剤部の神崎浩孝氏は言う。

「湿布薬は局所的な消炎鎮痛効果のある外用貼付薬で、れっきとした『薬』です。皮膚から薬剤を吸収させて痛みや炎症を和らげる効果があり、かなり強力な有効成分が含まれているタイプもあります。飲み薬に比べると重大な副作用は起こりにくいとされていますが、適正な量を適正に使わないと、深刻な副作用を招く危険もあるのです」

 市販の湿布薬に含まれている代表的な成分は「フェルビナク」「ジクロフェナクナトリウム」「インドメタシン」の3つ。いずれも非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類される薬剤で、抗炎症、鎮痛、解熱の作用がある。

「解熱鎮痛剤のアスピリン、ロキソプロフェン、イブプロフェンなども同じ非ステロイド性抗炎症薬です。有効成分が胃粘膜の保護作用を低下させてしまうため胃腸障害を起こしやすく、吐き気、消化不良、下痢、消化器の潰瘍や出血といった副作用や腎機能障害が表れるケースもあります。湿布薬を貼り付けると、皮膚から吸収された有効成分の一部は血液中に取り込まれて全身に回りますから、飲み薬を飲んだ時と同じ状態になります。貼る枚数に比例して成分の血中濃度は高くなるので、継続して過剰な量を貼り続けていると、重大な副作用のリスクが高まります」(神崎氏)

 湿布薬は飲み薬よりも安全性が高いというイメージがあるためか、通院しているクリニックで大量に処方してもらっている人も少なくない。現在、病院で処方できる湿布薬の枚数は1回70枚までとされているが、市販のものと併用して、腰、背中、肩に大量に貼り続けていた高齢者が、急性胃潰瘍で吐血して緊急搬送されたケースも報告されている。

「高齢者は加齢の影響で筋肉や脂肪の量が少なくなり、皮膚も薄くなってバリアー機能が低下している人も多い。そのため、貼り付けた湿布薬から吸収される成分が過剰になってしまう可能性があるので、より注意が必要です」(神崎氏)

■2枚で飲み薬と同程度まで血中濃度が上昇するタイプも

 さらに近年、成分がより吸収されやすい湿布薬が登場した。「ロコアテープ」と呼ばれる湿布薬で、2枚貼っただけで主成分の血中濃度が飲み薬を飲んだ場合と同程度まで上昇する。

「そのため、胃潰瘍など全身性の副作用が起こりやすく、『1日1回、上限2枚まで』と用法・用量が決められています。効果が大きい良い湿布薬ですが適正に使用することが大切で、医療機関の処方箋も必要です。ロコアテープは飲み薬に近い貼り薬といえるでしょう。また、粘着力も非常に強力で、かぶれや発疹を起こしやすいだけでなく、皮膚が薄い高齢者の場合、一気に剥がすと皮膚が傷ついてしまうケースもあります。これまでの一般的な湿布薬は、刺激で皮膚が荒れないよう入浴する際は30分ほど前に剥がしておくよう推奨されていましたが、ロコアテープは浴室で水やお湯で濡らしながら徐々に剥がしていく方法が皮膚に対するダメージが少なく安全です」

 また、「ケトプロフェン」という成分が含まれている湿布薬は「光線過敏症」という副作用を起こしやすい。皮膚の表面近くにとどまっている解熱鎮痛成分に日光などの強い紫外線が当たると、強いかゆみ、発疹、腫れ、水ぶくれ、ただれなどの激しい皮膚炎症状や色素沈着が起こり、これらの症状が全身に広がるケースもある。

 手軽だからこそ、湿布薬は正しく使わなければならないのだ。

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