Dr.中川 がんサバイバーの知恵

ワッキーは中咽頭がん克服も 化学放射線療法の副作用とは

ペナルティのワッキー(C)日刊ゲンダイ

 鼻の奥から食道をつなぐ管である咽頭のがんの中でも、ちょうど口の奥の突き当たり周辺にできる中咽頭がんは、HPV感染の有無で、進行度が変わり、治療成績が左右されるのです。で、HPV感染があると、化学放射線療法がとても効きやすく、リンパ節転移が4個まではステージ1と診断されます。このような診断はほかになく、がんの中で唯一の例外。本人は「早期ではなかった」とおっしゃいますが、そんなことはありません。

 その副作用は主に口の粘膜の炎症で、味覚障害や唾液の減少が多く、声が出にくくなることもあります。ワッキーさんは食べ物を飲み下せず、入院中に胃に管を通して栄養を注入する胃ろうを一時的につけたそうで、体重は10キロ減少。退院後も痛みが残ったようで、「へんとうを腫らした時を強くした感じ」と表現しています。

 そういう副作用も少しずつ回復。恐らく11~12月には良くなっていたのではないでしょうか。ここまで復帰を延ばしたのは、声を使う芸人として万全を期したのだと思います。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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