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日本のコロナワクチン接種開始にアメリカ人が関心を持つ理由

東京五輪はどうなるのだろうか(橋本聖子五輪組織委会長)/
東京五輪はどうなるのだろうか(橋本聖子五輪組織委会長)/(C)ロイター

 2月17日、日本でも新型コロナワクチンの接種が医療従事者から始まりましたが、アメリカでの報道の関心はただひとつ、「東京五輪に間に合うのか?」です。

 ワクチン接種そのものは、アメリカでのニュースとしての取り上げられ方はそれほど大きくありませんでした。ほぼ同じタイミングで発表された、橋本聖子氏の東京五輪・パラリンピック組織委会長就任の報道の方がタイムリーだったというのもありますが、アメリカ人から見て日本のコロナ感染には深刻なイメージがないというのが理由のひとつでもあると思います。

 しかし一方で、同じ先進国に比べ2カ月遅い接種開始に驚いたという声も少なくありません。彼らが即座に抱いたのは「東京五輪はどうなるのだろうか」という疑問です。

 アメリカでのワクチン接種はスタートから2カ月経過。1度でも接種した人は3億3000万人の人口の12%をようやく超えたところで、高齢者など接種を必要とする人に届いておらず、大きな問題になっています。

 世界のワクチン争奪戦の中で当初の見込みより遅れ、誰もが接種できるようになるのは7月末、集団免疫ができるのは秋、ある程度普通の生活に戻れるのはクリスマスか来年初めと発表されています。それに比べ、接種を始めたばかりの日本が、五輪開催までに間に合うのかというのは自然な疑問でしょう。

 日本でのワクチン接種に関する詳しい情報を伝えたAP通信は、遅れの最大の原因として「ファイザー製ワクチンの認可に時間がかかったこと」を挙げています。ファイザー製ワクチンは世界で4万4000人、アジア人も2000人を対象に治験を実施しました。しかしその中に日本人が入っていなかったために改めて治験をやり直したわけですが、わずか160人の日本人を対象にした治験がデータに信ぴょう性を加えられたのかという疑問を投げかけています。また、日本人の予防接種に対する信頼感が歴史的に非常に低い点も、接種が遅れた理由と伝えています。

 今後も日本のワクチン接種の動きは五輪開催の行方とともに関心を集めそうです。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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