独白 愉快な“病人”たち

水を飲み込むのも困難に…ぺえさんは急性咽頭炎で入院を経験

ぺえさん
ぺえさん(C)日刊ゲンダイ
ぺえさん(タレント・28歳)=急性咽頭炎

 2019年の秋、急性咽頭炎で10日間入院しました。入院先は陸上自衛隊の三宿駐屯地。この入院を境に不規則だった生活や食の好みが激変しまして、健康的な生活になりました。

 入院に至る少し前から咳や軽い喉の痛みはありました。でも普通の風邪だと思って過ごしていたのです。ところが、ある日の仕事帰りのロケバスで39度の熱と吐き気に襲われました。その足でマネジャーと病院に行くと風邪と診断されて、風邪薬が処方されました。ただ2~3日薬を飲み続けても良くなる気配がなく、むしろ症状は悪化。日に日に喉が腫れて食事はおろか、水を飲み込むのも困難になっていきました。

 たまたま地元の山形から遊びに来ていた母と「朝になったら病院に行こう」と言っていたその夜、あまりにも状態が悪いので「朝まで待っていられない」となって、深夜2時ごろ、救急車を呼びました。

 駆けつけた救急隊員に数日前に病院で風邪と診断された経緯を説明したところ、ただの風邪だと思われたのか、なかなか受け入れ先が見つからず、3~4軒は断られていました。最終的に三宿にある自衛隊中央病院というところに搬送され、そのまま入院となったのです。

 血液検査で「急性咽頭炎」と診断され、そのとき撮られた喉の写真を見たら真っ白にただれていました。初めは流動食も4分の1ぐらいしか食べられませんでしたが、点滴と飲み薬で改善し、10日間で無事に退院。その間に入っていたお仕事は事務所の先輩の鈴木奈々さんが「大丈夫だ、任せろ」と言わんばかりにカバーしてくださって、本当にありがたく感じました。その優しさのおかげで心おきなく体を休めることができた気がします。

 思えばデビューからそれまではずっと「頑張らなきゃいけない」「弱さを見せてはいけない」「休んでる場合じゃない」と無理を重ねていました。咽頭炎の1年前には、じつは突発性難聴にもなっていたのです。あのときは右耳が聞こえないまま学園祭のトークショーに出て、途中で左耳も耳鳴りでほとんど音が聞こえなくなって、必死に雰囲気と口の動きから読み取って乗り切りました。

 ただ、その頃は「この仕事やめよう」と思ったほど精神的に落ちた時期でもありました。ちょうどそのタイミングで初のドラマ出演のお仕事をいただいて「お芝居少しやってみれば」と背中を押されたような気がしたので続いているのですが、それがなかったらやめていたかもしれません。

■「休むときは休む」メリハリをつけないとダメ

 じつは咽頭炎の入院のタイミングでもそのドラマの映画化のお仕事が入って、退院の3日後には撮影スタートでした。マネジャーが病室に台本を持ってきてくれましたが、入院中は一切台本を見ませんでした。入院をきっかけに、体を休めることの大切さを知ったからです。急きょお仕事を代わっていただいた諸先輩方のご恩に報いるためにも、ここは何も考えずにしっかり休まなければいけないと思ったのです。頑張るときは頑張り、休む時は休むというメリハリをつけないと、気付かないうちにストレスがたまり、心身が疲労して免疫力も落ちてしまうんだと学びました。

 一番大きく変化したのは水を好んで飲むようになったことです。それまではコーラやジュースばかりで、水は眼中にありませんでした。しかも「飲み物=冷たいもの」から温かいお茶やスープも選択肢に入るようになりました。食べ物もこってり系専門でしたが、病院で出た和食がおいしかったので、魚やだしのうま味に目覚めました。

 病気になって再確認したのは家族のありがたみです。母だけでなく、姉や兄も駆けつけてくれてジンとしました。退院後、母に「頑張らないで頑張りなさい」と言われたのが胸に響いています。頑張り過ぎてしまう私の性格を分かってくれているからこその言葉だったと思います。

 実際、「オネエタレントは毒舌じゃなきゃいけない」とか「いつも強くなくちゃ」といった世間のイメージに自分を合わせてしまっていたことに気付きました。今はありのままの自分で、本当の気持ちから出た言葉を伝えるようにしています。

 ちなみに自衛隊中央病院は、迷彩服姿の人が行き交う不思議な空間でした。友達に連絡しても「自衛隊? 何で? どこ?」と不審がられました(笑い)。売店では自衛隊グッズがいろいろあって、珍しいので退院するとき自衛隊クッキーや自衛隊キャンデーなどを大量に買って退院の内祝いにお配りしました。

(聞き手=松永詠美子)

▽ぺえ 1992年、山形県生まれ。大学を卒業後、2015年に上京し、原宿のアパレルショップで働き始める。謎のショップ店員として「マツコ会議」(日本テレビ系)に出演したのがきっかけで16年からタレント活動をスタート。「#ジューダイ」(NHK・Eテレ)に出演、「ひみつ×戦士 ファントミラージュ!」(テレビ東京系)では俳優としても活躍。著書に「ぺえ語~原宿発!明日を変えるポジティブメッセージ~」がある。

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