ビートルズの食生活から学ぶ健康

ジョンは息子に「週1回だけ」ハーゲンダッツを食べさせた

「食」へのこだわりが強い3人。左からショーン、ヨーコ、ポール
「食」へのこだわりが強い3人。左からショーン、ヨーコ、ポール(C)Time Life Pictures/DMI/The LIFE Picture Collection/ゲッティ/共同通信イメージズ

 1970年代後半、ジョン・レノンは息子ショーンの食育に目覚めます。自ら玄米のご飯を炊き、パンを焼き、魚を料理する生活を送り始めます。ショーンが生まれる前に、ジョンとヨーコは、かねて関心のあったマクロビオテック(玄米、雑穀、全粒粉の小麦粉を主食、野菜、漬物、豆類などを副食とする食事法)を学ぶために、ボストンにあった「久司インスティテュート」を訪れます。ここは、ボストンを拠点にマクロビオテックの普及に努めた食養研究家・久司道夫が設立した施設です。

 2人は1週間勉強する予定でしたが、ファンやマスコミが騒ぎ出したため、2日の滞在で切り上げざるを得ませんでした。

 35歳から40歳であったこの時期のジョンの日常生活は、人生においてもっとも快適に過ごした時期といってもいいかもしれません。1975年3月に妊娠が判明した時、ヨーコは子育てに関して、ジョンに提案をします。先妻シンシアとの間に長男ジュリアンが生まれた時、ジョンはわが子と一緒にゆっくりとした時間を過ごしたり、育児に精を出したりすることはほとんどありませんでした。それを知っていたヨーコは、自分たちの子育てに関してはジョンの協力を強く求めたのです。ジョンは多くの時間を息子と過ごすよう努めると同時に、食育への関心を示します。

ジョン・レノン 愛の遺言」(講談社刊)という本があります。著者はヨーコですが、ジョンが凶弾に倒れる直前に受けたインタビューが紹介されています。その中でジョンはショーンの食育について、基本的には自然食、健康食中心であるとした上でこう語っています。

「週に1回、ハーゲンダッツのアイスクリームを食べることができる」

 また、時にはマクドナルドに行くこともあったようですが、甘いもの対策同様、回数は制限していたようです。精製された砂糖は食べさせず、ケーキを食べさせる時にもハチミツで甘味をつけたものを注文していました。ハチミツにはオリゴ糖が多く含まれていますが、小腸で吸収されにくく、血糖値の上昇を抑える性質があります。

 ここで、砂糖について簡単に述べてみたいと思います。まず白砂糖の特徴ですが、ほとんどがショ糖(スクロース)という単糖と呼ばれる甘味成分で、ミネラル分はほとんど含まれていません。さらにグラニュー糖は99・9%がショ糖。ショ糖はエネルギー源ではあるものの、カロリーが高いため、過剰な摂取は肥満、糖尿病のリスクを高めます。虫歯発生の原因でもあります。

■ショーンは「ご飯とみそ汁の食事」が大好き

 一方、白砂糖を作った後の残りの糖液を煮詰めて結晶として取り出して作る三温糖はミネラル分が含まれています。さらに、黒砂糖はといえば、カリウム、マグネシウムなどのミネラル分など、ショ糖以外の成分が約15%含まれています。黒砂糖には腸内環境の改善が期待できるラフィノース(オリゴ糖の一種)、グルコースという糖の吸収を抑制するフェニルグルコシド、疲労回復、肥満・生活習慣病予防などの効果があるオクタコサノールなどの物質が含まれています。いずれにせよ、白砂糖に比べて、黒砂糖の方が栄養面はもちろん、血糖値の急上昇、乱高下を抑制するという点においては優れています。しかし、糖分であることは同じですから、過剰な摂取は脂肪細胞として蓄積されるリスクを高めることになります。

 ジョンが精製された糖の摂取について、どこまでリスクを認識していたかはわかりませんが、ショーンの誕生以後、自然食、和食などを中心にした食生活を実践していたことは間違いありません。ちなみに、ショーンは後のインタビューでこう明かしています。「ご飯とみそ汁の食事が好きだった」と。

松生恒夫

松生恒夫

昭和30(1955)年、東京都出身。松生クリニック院長、医学博士。東京慈恵会医科大学卒。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。地中海式食生活、漢方療法、音楽療法などを診療に取り入れ、治療効果を上げている。近刊「ビートルズの食卓」(グスコー出版)のほか「『腸寿』で老いを防ぐ」(平凡社)、「寿命をのばしたかったら『便秘』を改善しなさい!」(海竜社)など著書多数。

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