時間栄養学と旬の食材

ハマグリは細胞や神経を元気にするビタミンB12が豊富

ハマグリ
ハマグリ

 ハマグリは3月3日のひな祭りのお吸い物には欠かせない食材です。産卵に向けて栄養をたっぷりとためこむ2月から4月はハマグリの旬ともいわれています。

 国内ではハマグリに加え、古来の在来種であるチョウセンハマグリが採れます。2つの違いは稚貝の時が最も顕著で、成長してから殻の外側表面だけで見極めるのはとても難しいほど似ています。

 ただ、この日本で採れる2種類は年々数が少なくなり高価になっていることもあり、スーパーなどでは中国から輸入や移殖されたシナハマグリを目にすることも多いでしょう。

 そんなハマグリの栄養素の中で特に注目したいのが、ビタミンB12です。DNAの合成や調整、正常な細胞の増殖を促したり、神経を正常に働かせるといった効果があります。

 野菜などには含まれないビタミンなので、ベジタリアンの方が欠乏しやすい栄養素。恐ろしいことに、そのベジタリアンの女性から母乳のみで育てられる赤ちゃんは、生後数カ月以内にビタミンB12欠乏症を発症することもある……そんな報告もあるほどです。

 ビタミンB12は胃酸と結合することによって吸収されるビタミンなので、胃の手術をしたり、高齢で胃酸の分泌が落ちても不足しやすくなります。

 またハマグリは、鉄、タウリン、亜鉛などのミネラルも多く含んでいることから、鉄貧血、高コレステロール、動脈硬化、高血圧症の予防・改善や、疲れた体の回復にも効果があるとされている優秀食材です。

 残念なことに、ビタミンB12を朝と夜どちらに食べた方がいいかの報告は、いまだなされていません。ただ、ビタミンB12を吸収するためには胃酸が必要なので、食事のはじめよりも終盤に食べるようにする方がより吸収率が上がるといえます。コース料理で出される締めのスープの位置づけはまさに理にかなっている食べ方です。

 貝と貝を叩き合わせたときに、澄んだ高い音が鳴るもの、貝殻の表面にぬめりと光沢があるものを選びましょう。鈍い音がするもの、表面がさらさらとしていて白っぽいものは古いことが多いです。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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