新型コロナワクチンの疑問に答える

新型コロナワクチンは1回の接種では効果が不十分なのか?

新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を受ける医療従事者
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を受ける医療従事者(C)共同通信社

 供給スケジュールが後手後手の新型コロナウイルスワクチンについて、接種回数を削減するという話が持ち上がっている。米ファイザー、モデルナ、英アストラゼネカ製のワクチンは、いずれも間隔を空けて2回打つ必要があるとされているが、1回でも効果が見込めるというのだ。これ、どういうことなのか。

【Q】なぜ2回接種の必要があるのか?

【A】「新型コロナウイルスワクチンを接種するのが初めてだからコロナウイルスに対する免疫回路をつくるためです。インフルエンザワクチンのように何年も打ち続けている場合は1回で免疫は獲得できますが、初めての場合は難しいのです」

 日本ではインフルエンザワクチンも、13歳未満は2回接種が推奨されている。これも初めてになるからだ。

「ワクチンは1回接種すると初回免疫(プライミング)が得られます。これは免疫を活発にするための予備刺激と呼ばれるもので、ウイルスの感染能力を失わせる抗体の産生は10日~2週間まで増え続け、その後は徐々に減少していきます。そこで2回目が必要になるのです。ファイザーの場合は下がりつつある接種3週間後(モデルナとアストラゼネカは28日)に追加免疫(ブースター)をすることで、体内の免疫記憶を活性化させてウイルス予防効果を増強させる仕組みになっています」

【Q】1回しか打たなかったら?

【A】ファイザー製ワクチンの効果について、イスラエルの研究グループが、「1回のワクチン接種により発症を85%減らす効果がある」と発表した。ただし、治験は2回で行われており、その予防効果はファイザーは95%、モデルナが94%、アストラゼネカで66%とされる。

「治験の結果や論文から分析すると、メッセンジャー(m)RNAを使ったファイザーやモデルナ製のワクチンであれば1回でも7割程度の有効性があると考えられます。ただし、アストラゼネカ社の『ウイルスベクターワクチン』は2回接種したところで、効きにくい。なぜなら、弱毒化したチンパンジー由来の風邪のアデノウイルス(人間の体内では病気を起こさないウイルス)は生きています。生きたウイルスは同じものを接種したところで、免疫が活性化されない可能性が高いです。アデノウイルスに対する抗体がすでにできているため、アデノウイルスワクチンは排除されるのです」

 接種するワクチンによって異なるのだ。

奥田研爾横浜市立大名誉教授
奥田研爾横浜市立大名誉教授(C)日刊ゲンダイ

【Q】1回目と2回目で違う製薬会社のワクチンを打ってもいいのか?

【A】2月上旬、英オックスフォード大は、1回目と2回目の接種で別の会社の開発ワクチン(mRNAワクチンなど)を投与し、効果や安全性を調べる治験を始めると発表。効果が認められれば、今後1つのメーカーの供給が滞っても対応できるようになる。

「理論上、mRNAワクチンを使っているファイザー、モデルナはそれぞれ1回ずつ使っても問題ありません。アストラゼネカに関しては、先述した通り、2度打っても効果が期待できないため、むしろ2回目に他のメーカーのワクチンを打つほうが有効であると考えています。すでに、アストラゼネカは自社開発のワクチンとロシア製ワクチン『スプートニクV』を組み合わせた治験を始めていますが、うまくいけば有効性が相乗効果で90%を超えると発表しています。以前から、2種の異なるワクチンを間隔をあけて打つ方法もあり、混合することで効力を高められると考えられます」

 2月に入って、英国企業が「錠剤」によるワクチンの臨床試験の承認を要請したと、地元メディアに報じられた。

奥田研爾

奥田研爾

1971年横浜市立大学医学部を卒業後、米国ワシントン大学遺伝学教室、ハーバード大学医学部助教授、デューク大客員教授、スイスのバーゼル免疫研究所客員研究員として勤務。2001年横浜市立大学副学長、10年から名誉教授。12年にはワクチン研究所を併設した奥田内科院長。元日本エイズ学会理事など。著書に「この『感染症』が人類を滅ぼす」(幻冬舎)、「感染症専門医が教える新型コロナウイルス終息へのシナリオ」(主婦の友社)、「ワクチン接種の不安が消える コロナワクチン114の疑問にすべて答えます」(発行:日刊現代/発売:講談社)のほか、新刊「コロナ禍は序章に過ぎない!新パンデミックは必ず人類を襲う」(発行:日刊現代/発売:講談社)が8月に発売される。

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