Dr.中川 がんサバイバーの知恵

がん患者の新型コロナワクチン接種 治療との兼ね合いは?

池江璃花子選手は最優先接種の対象(代表撮影)

 こうしてみると、注意すべきは抗がん剤で、ほかの治療はどうなのかという疑問が湧くかもしれません。放射線治療やホルモン療法は、それらに感染リスクを上げるほどの副作用はほとんどありません。決められた接種スケジュールでワクチンを接種してよいと思います。

 日本肺癌学会は18日、コロナについての肺がん治療の改訂版をウェブで公開。その中に設けたワクチンに関する項目には、こんな記述が見られます。

 免疫チェックポイント阻害剤(ICI)については、ワクチン接種後2~3日以内に有害事象が多く発現する傾向があるため、可能ならワクチン接種とICI投与の時期を調整することは考慮されていい。接種を回避するほどのトラブルではなく、接種は基本的に問題ありません。ワクチン接種と治療のタイミングの問題ですから、主治医と相談するのが無難でしょう。

 7割の日本人がワクチンを接種すれば、国内のコロナ禍は収束します。迷っている方も、前向きに接種してください。もちろん私も、3月に受ける予定です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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