セックスが痛い

みんな違ってみんないい…自分たちが楽しめるセックスを

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 病気や感染症などを理由に、社会から差別や偏見の対象と扱われる「スティグマ」の問題。精神疾患やHIV感染などで知られています。

 このスティグマ問題、セックスが痛い人にも当てはまるのではないかと考えています。セックスが痛くてできないと「女ではない」「相手を喜ばすことができない」「自分の我慢が足りないから」「人より痛がりだから」と自分を責めてしまう。妊娠を期待している場合は、夫や家族全体に迷惑をかけていると精神的にも追い込まれるセルフスティグマが存在します。

 他者に相談すれば、「彼が逃げてしまう」「男性パートナーがかわいそう」「多少の痛みぐらい」「人より痛がる方では」と同情どころか、そのくらいの痛みは我慢できないのかと遠回しに非難されることも。根底には、セックスで挿入を受け入れるのは当たり前という認識があり、できない人への差別があると感じています。

 これらは、セックスが生殖に関わる行為だから生まれた考え方かもしれません。しかし、生殖がそこまで重要なのか。子供を望まない若いカップルだって存在するし、痛い人でも、痛い以前に子供を望まない人だっているはずです。

 しかし、社会では子なし夫婦へのスティグマもあります。私自身も「仲がいい夫婦なのに(子供をつくらないのか)」と何度か言われた経験があります。セックスや妊娠できないことで非難され、個人の幸せが奪われるのは非常に悲しい。中高年の間でも、セックスに関して「まだ現役だ」と口にする男性や、閉経した女性が「女が終わる」と考えてしまうのも、なんか似ていますね。

 私は、挿入セックスにこだわらない楽しいセックスは可能だし、閉経しても、性機能が低下しても、その人の魅力は変わらないと信じています。現在、国際的に多様な性やセックスの形があり、個々に違ってよいという社会認識が包括的セクシュアリティー教育を通じて広まりつつあります。このスティグマも早く過去のものになればいいなと思います。

小林ひろみ

小林ひろみ

メノポーズカウンセラー。NPO法人更年期と加齢のヘルスケア会員。潤滑ゼリーの輸入販売会社経営の傍ら、更年期に多い性交痛などの相談に乗る。

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