コロナ後遺症「一番の防衛策」は? 専門外来の医師が指摘

症状が軽くても後遺症は重症になる場合も
症状が軽くても後遺症は重症になる場合も(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス感染症の回復後、後遺症に悩む人が少なからずいる。「87・4%に何らかの症状」というイタリアの調査報告もある。昨年3月から専門外来を開いている「ヒラハタクリニック」(東京・渋谷)の平畑光一院長に話を聞いた。

 ヒラハタクリニックのデータ(1月31日時点)によれば、「後遺症外来」を訪れた808人のうち最も多いのは40代の238人、次いで30代211人、20代153人と続く。コロナが重症化しやすい高齢者は少数だ。

「コロナの重症度と後遺症の重症度はまったく関係していません。無症状でPCR検査を受けておらず、話を聞く中で『それはコロナだったかも』という“コロナ後遺症疑い”の人もいます」

 症状は多岐にわたる。倦怠感、疲労感、頭痛、痛み、息苦しさ、動悸、微熱、咳、食欲不振、下痢、胸の違和感や痛み、味覚・嗅覚障害、不眠、気分の落ち込み、思考力の低下、脱毛……。

「働いたり激しく動くと、直後は何でもないのに翌日には鉛を背負ったほどの倦怠感や疲労感で動けなくなったり、ブレインフォグ(頭がぼんやりして考えがまとまらない)などが起こる人もいます。これらは、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の症状に非常に似ています」

 ME/CFSは原因が分かっておらず、多くのウイルス感染症の後遺症として知られている。治療法も定まっていない。

 ME/CFSで食事や入浴といった日常生活のもろもろが困難になる人も珍しくない。

「ME/CFSを含めコロナ後遺症は、それぞれの不調に対して行う対症療法しかありません。漢方薬を駆使して治療に当たっています」

■激しい運動は避ける

 平畑院長がこれまでの経験から、コロナから回復後、絶対に避けるべきだと言うのが「3~4カ月間の激しい運動」。散歩や買い物程度ならいい。ジョギング、ゴルフ、ジム通いなどはNGだ。

「回復して元気でも、一転してME/CFSのような症状が出る可能性があります。3~4カ月間激しい運動をしないことが、後遺症を起こさない一番の防衛策です」

 すでに強い倦怠感や疲労感がある人は、極力安静にし、やらなくていいことはしない。シャンプー、ドライヤー、家族との口ゲンカといったことでも、前述の「翌日動けないほどの倦怠感や疲労感」が起こる場合がある。「散歩くらいはいいでしょうか?」と聞く人もいるそうだが、強い倦怠感があるなら散歩もしてはいけない。

「倦怠感には必須アミノ酸BCAAがいいといわれており、患者さんにお勧めしています」

 漢方薬は、主に舌診で処方するため、人によってまったく異なる。

 代表的なものでは、元気がない時は十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、頭痛には五苓散(ごれいさん)や七物降下湯(しちもつこうかとう)、釣藤散(ちょうとうさん)、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)、咳に茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)。

「コロナ後遺症の頭痛には、胃に負担をかける鎮痛薬より漢方の方が合うように思います。また、コロナ後遺症ではかなりの確率で胃食道逆流症が見られ、咳、息切れ、動悸、不眠などにつながっています。茯苓飲合半夏厚朴湯は胃食道逆流症にもよく効きます」

 体、特に首元が冷えると倦怠感が強く出る患者が珍しくなく、湯たんぽやネックウオーマーなどで体を温めることも推奨。脳を刺激する「夜まで寝転がってスマホ」や、頭痛を起こしやすいカフェイン、チーズ、ナッツの制限など、症状に応じた生活の注意点も事細かに指導している。

 最近ではデータも蓄積し、漢方薬と生活療法によって1週間ほどで症状が楽になり、数カ月間で症状が完全になくなる人もかなりいる。いずれにしろ、何らかの症状があれば早めの対策が肝心だ。

 残念ながら、コロナ後遺症は診てくれる医療機関がいまだ少ない。ヒラハタクリニックではコロナ後遺症について実際の診療のほか、オンライン診療も受け付けている。

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