科学が証明!ストレス解消法

友人の数より理解者こそが大切 たった1人で百人力になる

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 昨今、「おひとりさま」という言葉をよく耳にします。「1人焼き肉」「1人カラオケ」という具合に、友人と共に時間を過ごすのではなく、自分1人で好きなことをする――。そういった傾向はコロナを契機にさらに高まっているといいます。

 外出自粛に伴うイエナカ時間や、3密を避けるためのソロ活動の増加により、1人でも楽しめるサービスが増え、今ではソロ活動を“寂しいもの”と解釈する人はあまりいないかもしれません。

 そもそも、人付き合いがおっくうな人にとっては、「友人が少ないことは不幸なの? 友人は最低限いればいい」と考える方もいるはずです。友人が多いと、さまざまな情報を共有したり、わいわいがやがや楽しめたりと、孤独を感じる機会の減少につながる半面、あちらを立てればこちらが立たず、人間関係の複雑さに疲弊してしまう場合もあります。友人の数が多いからといって、幸せが約束されるわけではない。だからこそ、人間は加齢と共に友人との付き合い方が変わるのでしょう。

 私は、「理解者の数こそ大事」だと思っています。人間は、多数派や周囲の反応に合わせてしまう生き物。スワースモア大学のアッシュによる有名な実験に、「アッシュの同調実験」(1955年)と呼ばれるものがあります。

 基準となる1本の線が書かれたカードと、長さの異なる3本の線が書かれたカードを被験者に見せて、前者のカードの線と同じ長さのものを、後者のカードの中から選ばせるという実験を、次の条件で行いました。【7人の集団で12回行う】【7人中6人はサクラで、本当の被験者は7番目に回答する】【6人のサクラは12回のうち7回、全員がわざと同じ誤答をする】――

 結果、37%の被験者が、一度は間違った回答をしていました。間違うのは、サクラ6人が全員一致で誤答したときが最も多く、1人でも正解を言うサクラがいると正解率は大きく跳ね上がったそうです。つまり、正しいものを選んだとしても、大多数の人が間違った意見を口にすると同調圧力が働き、多数派の意見になびいてしまうことが明らかになったのです。

 同時に、自分と同じ回答を選ぶ味方がいたケースでは正解率が跳ね上がったように、たった1人でも味方がいれば、自分の気持ちを正直に言いやすい傾向があることも分かりました。「アッシュの同調実験」は、まさに人間の不安定さを浮き彫りにした実験であり、一個人が“変わった人”で存在することの難しさを伝えているとも言えるでしょう。

 裏を返せば、良き理解者が1人でもいれば、自信を持って行動できる。先のアッシュの実験では、すべての回で被験者と同じ線を選ぶ人(つまり味方)が1人いると、同調する確率は5・5%まで減少し、本来の正解率に近づいています。

 友人が多いに越したことはありません。もちろん、「おひとりさま」もすてきです。ただし、良き理解者がいることこそ、最も尊い。たった1人でも、百人力になるのです。


◆本コラム待望の書籍化!2022年11月24日発売・予約受付中!
『不安』があなたを強くする 逆説のストレス対処法
堀田秀吾著(日刊現代・講談社 900円)

堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

関連記事