ずっと車の運転をしたいなら…40歳を越えたら緑内障検査を

高齢者では珍しくない病気
高齢者では珍しくない病気(C)日刊ゲンダイ

 今月7日から13日までは「世界緑内障週間」だ。国内400以上の施設で、緑内障のシンボルカラーのグリーンでライトアップが行われる。この機に改めて知っておきたい緑内障の知識について、たじみ岩瀬眼科(岐阜県多治見市)の岩瀬愛子院長に聞いた。

 緑内障は、日本人の中途失明の原因の1位で、全体の3割近くを占める。一方で、緑内障を発症していても気付いていない人が珍しくない。

「日本緑内障学会が多治見市で行った疫学調査では、発見された全緑内障患者の89・5%が未診断。緑内障であることをご存じありませんでした」

 その背景には、「自分が緑内障になるはずがない」と思っている人が多いことが挙げられる。

 緑内障は、眼圧が高い状態が続いて視神経が傷つき、視野が欠けたり、視力が低下する病気だが、たいていの場合、症状がゆっくり進むからだ。

「視野が欠けていても、両目で見ているとカバーし合って症状が分かりにくい。自覚症状に乏しいので検査も受けない」

 緑内障は治療を受けても失った機能を取り戻せない非可逆性の病気だ。つまり、発見が遅れるほど治療も遅れ、失う視野が広範囲になる。しかし診断確定後に治療を継続すれば、視機能は維持できる例も多い。

「緑内障になったからといって、すべての人が失明するわけではありません。その時期の適切な治療を継続し、視機能を維持できるケースも増えています。希望を持って治療することです」

■加齢とともに有病率は上昇する

 一方で、失った視野が広範囲になれば、老後の生活の質(QOL)の低下につながる。影響が大きいのが車の運転だ。公共交通機関が整っていない地域では、運転は自分の意思で決定できる移動手段で、社会生活の維持に必須のツールになる。

「自分に視野異常があると知っていれば、緑内障の初期・中期までなら気を付けて、なんとか安全運転が可能です。しかし進行して、ある段階を過ぎてしまうと、どう頑張って注意しても運転が危険になる場合があります。問題は、自分が危険な状態だと知らず、『自分は見えている。安全運転をしている』と思い込んでいる人がまだまだいることなのです」

 緑内障は40歳以上で発症リスクが高くなり、加齢とともに有病率は高くなる。70代になると10人に1人は緑内障で、決してまれな病気ではない。40歳以上は自覚症状に頼らず、定期的に、緑内障の検査(眼底・眼圧検査)を受けるべきだ。

「眼鏡が合わない、老眼が始まった、最近見えづらいと感じたら、眼鏡店に行く前に眼科で検査を受けてください」

 なお、緑内障の検査は会社や自治体の健診に含まれていないこともあるので、「毎年健診を受けているから自分は大丈夫」と思ってはいけない。

 緑内障の検査は、できれば毎年、最低でも3~5年に1回がお勧め。ただし、次の場合は緑内障の発症リスクが高い。眼科医に相談し、もっと短いスパンで検査を受けた方がいい。

 まず、眼鏡なしで0・1以下が見えない強い近視の人。次に、緑内障の家族がいる人。緑内障には遺伝的要因もある。

 そして、検診などで「視神経乳頭陥凹拡大」「眼圧が高い」と言われた人。これらは緑内障になりやすい状態で、「絶対緑内障にはならない」と言われない限り検診は受け続けた方がいい。加齢とともに目は変わるし、眼圧は上下するため、一度の検査で分からないことがあるからだ。そして、たとえ緑内障と診断されたとしても治療の継続が大切になる。

 もうすぐ花見の季節。目が見えなくなれば、そういった四季折々の楽しみも失うことになる。緑内障の早期発見、早期治療で人生100年時代を謳歌しようではないか。

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