2021年3月初旬現在、死者が52万人という惨事を生み、今も進行中のアメリカのコロナ禍で、一筋の光のようなニュースが静かな話題になっています。パンデミックをきっかけに看護師志望者が増加しているのです。
以前からアメリカでは慢性的な看護師不足が起きていましたが、病院が医療崩壊に陥る中、彼らへの負担は異常なものとなりました。マスクやガウン不足が原因と考えられる感染で亡くなる看護師が少なくなかったことは、このコラムでもお伝えした通りです。家族と自分の命を守るために退職せざるを得なかった看護師もいました。
ところがその一方で、大学の看護学科(正看護師になるにはアメリカでは基本的に4年制の大学卒業資格が必要)に入学した人の数が、この1年で6%増加したのです。
大きな理由としてまず考えられるのは、誰よりも厳しい状況に置かれた看護師の現状が大きく報道され、若者への大きな刺激になったことです。
ニューヨークでは毎晩7時に街中の建物の窓から看護師さんへの拍手喝采が数分間続き、スーパーボウルやゴールデングローブ賞などメジャーなイベントへの招待など、さまざまな方法で彼らをねぎらおうという動きも非常に活発です。
また、コロナで失業者があふれる中、看護師という職業自体が見直されたことも大きいでしょう。もともと平均年収850万円で福利厚生がしっかりしていますし、コロナ禍初期にニューヨークで看護師が不足した時は、全米から応援に駆け付けた看護師の給与は1週間で最高100万円に上りました。
アメリカでは「病棟を仕切るのは医師ではなく看護師」と言われるほど、彼らは大変リスペクトされています。
患者と24時間向き合い命を支える看護師に、どれほど感謝の気持ちを伝えても足らないと考える人が増えたのもコロナがもたらしたひとつの結果だといえるかもしれません。
ニューヨークからお届けします。