専門医が教える パンツの中の秘密

LOH症候群 ストレスが男性ホルモンの減少に拍車をかける

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 男性は中年以降になると「勃起が弱い」「朝立ちがない」「性欲減退」「トイレ(尿)が近い」などの症状を感じる人が増えてきます。「それは年だから仕方がない」と、ひと言ですませてしまう人も多いことでしょう。しかし、なぜ年を取るとこのような症状が表れるのでしょうか。個人差もあって、何歳になっても元気な人もいます。

 加齢に伴って、さまざまな症状を引き起こす原因に「男性ホルモン(テストステロン)の低下」があります。いわゆる「男性更年期障害」です。医学的には「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」と呼びます。

 男性のテストステロンは、全体の95%は精巣(睾丸)から、残りの5%は副腎から分泌されています。その分泌量は、10代前半から急激に増え始め、20歳ごろをピークに年齢とともになだらかなカーブを描きながら減少していきます。

 女性の更年期障害も女性ホルモン(エストロゲン)の低下で引き起こされます。エストロゲンの分泌は40歳から閉経を迎える50歳前後に急激に低下するため、体の不調も急激に強く表れるので気づきやすいのです。一方、男性の場合は通常、緩やかに低下するので症状に気づきにくい。そのため「年のせい」と思ってしまうのです。

 ところが男性のテストステロンを急激に減少させてしまう要因があります。その代表的なものが「ストレス」です。テストステロンは、脳の視床下部から分泌される性腺刺激ホルモンの働きによって精巣で作られますが、継続したストレスによって副腎からコルチゾールが大量に分泌されると、性腺刺激ホルモンの作用が抑制されます。そのためストレスの多い50~60代の発症が多く、症状の出現にも個人差があるのです。

 LOH症候群の症状には、先に挙げた下半身の症状の他に「疲労感」「筋力低下」「ほてり」「発汗」「頭痛」「目まい」「耳鳴り」などの身体症状、「不安」「イライラ」「不眠」「記憶力や集中力の低下」「抑うつ」などの精神症状も起こります。

 テストステロンの低下は血液検査で調べることができ、血中遊離テストステロンが「8.5pg/ミリリットル以下」だと治療対象になります。治療は、テストステロン補充療法(注射)や漢方薬の処方が行われます。

 また、筋肉を使うことでテストステロンが増えるので、適度な運動も大切です。食事では「ニンニク」「タマネギ」「ニラ」などのネギ類、「山いも」や「おくら」などのネバネバ食品が男性ホルモンを増やすといわれます。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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