複数のビタミン成分を配合したサプリメントである「マルチビタミン」は、栄養バランスの乱れを改善し、健康に良い影響を与えるイメージがあると思います。しかし、心臓病や脳卒中の予防、認知機能の改善などを検討した研究では、いずれもマルチビタミンの有効性は示されませんでした。
ただ、体に良いと言われるようなサプリメントを飲んでいると、なんとなく健康的になったように感じることもあるでしょう。マルチビタミンの摂取と自己申告による健康状態の関連を検討した研究論文が、2020年11月4日付で英国医師会誌のオープンアクセスジャーナルに掲載されました。
この研究では、米国の国民健康調査のデータから、2万1603人が解析の対象となりました。解析対象者はマルチビタミンを摂取していた人と摂取していない人に分けられ、自己申告による健康状態が比較されています。健康状態は「悪い」「普通」「良い」「とても良い」「非常に良い」の5段階で評価され、「良い」~「非常に良い」と回答した人を健康状態が良好な人と定義しています。なお、結果に影響しうる年齢、性別、教育水準などの因子について、統計的に補正して解析されました。
その結果、健康状態が良好と回答した人はマルチビタミンを摂取していない人に比べて、摂取していた人で30%多いことが示されました。科学的に効果が証明されていないマルチビタミンを摂取しても、主観的な健康状態は改善するという結果です。
もちろん、マルチビタミンが直接的に健康状態を改善しているわけではなく、マルチビタミンを摂取しているという心理的な要因、つまりプラセボ効果のようなものが強く影響しているのだと思います。
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