■血糖降下薬は大きく進歩している
糖尿病はここ30年で治療薬がものすごく進化しました。たとえば血糖降下薬は、いくつもの種類の薬を合わせた合剤や、週1回の注射で済むインスリン、1日のどのタイミングで打ってもいいインスリンも開発されています。
また、膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を増加させるインクレチンというホルモンのひとつGLP―1を分解する酵素(DPP―4)の働きを妨げることで血糖を下げる「DPP―4阻害薬」、腎臓の近位尿細管で糖を再吸収する役割を担っているSGLT2の働きを阻害し、余った糖を尿と一緒に排出させることで血糖を下げる「SGLT2阻害薬」という飲み薬も登場しました。
こうした薬の進化によって、糖尿病の患者さんにとって一番怖い低血糖を起こしにくい状態で血糖バランスを保てるので、健康寿命を延ばせる期待が持たれています。薬による治療と生活習慣の改善で、糖尿病はきちんとマネジメントできる病気になってきているのです。このように治療体系がしっかり確立されている病気に対し、心臓血管外科が積極的に入り込んでいく必要はありません。あくまでも、糖尿病の影響で心臓にトラブルが起こってしまった段階で治療に当たれば十分なのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」