上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

糖尿病と心臓疾患は個別に対応するのが現状では最善の策

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

■血糖降下薬は大きく進歩している

 糖尿病はここ30年で治療薬がものすごく進化しました。たとえば血糖降下薬は、いくつもの種類の薬を合わせた合剤や、週1回の注射で済むインスリン、1日のどのタイミングで打ってもいいインスリンも開発されています。

 また、膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を増加させるインクレチンというホルモンのひとつGLP―1を分解する酵素(DPP―4)の働きを妨げることで血糖を下げる「DPP―4阻害薬」、腎臓の近位尿細管で糖を再吸収する役割を担っているSGLT2の働きを阻害し、余った糖を尿と一緒に排出させることで血糖を下げる「SGLT2阻害薬」という飲み薬も登場しました。

 こうした薬の進化によって、糖尿病の患者さんにとって一番怖い低血糖を起こしにくい状態で血糖バランスを保てるので、健康寿命を延ばせる期待が持たれています。薬による治療と生活習慣の改善で、糖尿病はきちんとマネジメントできる病気になってきているのです。このように治療体系がしっかり確立されている病気に対し、心臓血管外科が積極的に入り込んでいく必要はありません。あくまでも、糖尿病の影響で心臓にトラブルが起こってしまった段階で治療に当たれば十分なのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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