科学が証明!ストレス解消法

安易に隣の芝生をのぞくと幸福度が下がり悩みが増大する

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 多様化が叫ばれている時代。いろいろな生き方があってしかるべきだと思いますが、どうしても「独り身」「窓際(出世コースから脱落)」「交友関係の狭さ」など、自分のネガティブな要素に対して憂鬱な気持ちになってしまう人もいるでしょう。そういったものをストレスなく、自分も社会も受け入れてくれる多様性とやらに期待したい一方で、人間の個人的な悩みが足かせになってしまうことは、いつの時代も変わらないと思うのです。

 シドニー大学のザボとニューサウスウェールズ大学のラビボンドが行った39人の大学生に対する調査(2006年)では、悩み事の48%は問題解決過程に関するものだったという報告があります。つまり、結果がどうなるかよりも、人間はどうやって問題を解決しようかについて悩み、さらには、結果は変えようがないと考える人ほど、さまざまな解決法を否定的に捉える傾向があったそうです。

「どうして自分はダメなんだろう?」「どうして自分は人と上手に付き合えないのか?」などと考えることで、「だったらこうしたらいいのかな」と悩み始め、「いやいや、それじゃだめだ」とさらなる深みに陥っていくというわけです。

 先に挙げた「独り身」や「窓際」といった状況は、他者と比べるがゆえに「隣の芝生が青く見える」。そして、自分の能力の心もとなさを感じてしまい、頭では「自分は自分。他人は他人。比較する必要などないし、しても意味がない」、そう頭ではわかってはいるものの、やっぱり他人と比較をしてしまうのです。

 スタンフォード大学のフェスティンガーによる「社会的比較」という理論があります。人は正しく自己評価するために誰かと比べたがるという理論です。人は生きていく上で、自分自身、そして自分の置かれた状況や環境をよく知っていることが必要だから誰かと比べてしまうんですね。

 テルアビブ大学のアラドらが次のような実験(2017年)を行っています。普段はフェイスブックの使用が禁止されている情報セキュリティー会社の社員144人を対象に、彼らにフェイスブックの使用を解禁し、「友人の投稿のポジティブ体験/ネガティブ体験の受け止め方」「閲覧頻度」「自分自身の体験」「比較の程度」「幸福度」「フェイスブックの使用状況」などを調査しました。

 その結果、若い社員ほど、フェイスブックの使用によって「社会的比較」をする傾向があり、「社会的比較」を行うと幸福度が下がる――という結果が明らかになりました。

 一方、「社会的比較」の「頻度」が幸福度を下げるのではなく、比較の「程度」が影響するということもわかったそうです。

「社会的比較」は、ある意味、手軽なサンプリングであると同時に、かなり偏ったサンプリングでもあります。

 もし「社会的比較」を行うなら、本来は膨大な量のサンプル収集や調査を行わなければいけません。ですから、隣の芝生を見るような安易な「社会的比較」は幸福度を下げ、悩みを増幅してしまいます。

 安易に誰かと自分を比較しないようにするだけで、無駄な悩みから解放されていくのです。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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