Dr.中川 がんサバイバーの知恵

子供のがんで相談すべき病院3つ 高校生は7割が休学・退学

7割が休学・退学を選んでしまう(写真はイメージ)
7割が休学・退学を選んでしまう(写真はイメージ)

 がんというと、中高年に発症しやすいイメージがありますが、必ずしもそうではありません。若くして患うケースもあります。特に思春期の15歳から30歳前後の思春期・若年成人は英語の頭文字を取って「AYA世代」と呼ばれ、その世代の方々のがんが注目されているのです。

 そんな中、国立がん研究センターが、興味深い調査を行っています。全国97の医療機関でがんと診断された18歳以下の患者の家族が対象で、2年前から昨年にかけて治療や生活について聞いたものです。

 その結果、高校生の患者では治療で「休学」した人が61・3%、「退学」した人が8・8%に上り、学業に大きな支障を来している実態が明らかになりました。その子どもを支える家族については、仕事や働き方を変えたケースは65・5%に上り、このうち「休業や休職」が35・7%、「退職や廃業」が32・8%に上ったのです。

 家族が悩みを相談できる支援は不十分で、支援が十分あるという人は39・7%と4割を下回っていました。多くの家族が悩みを解消できず、学業を中断せざるを得なくなるほか、仕事を辞めてしまう実態が浮き彫りとなったのです。

 たとえば、たばこをたくさん吸う人が年を取って肺がんになるのは、自己責任の影響が否定できません。大腸がんは欧米型の脂肪分の多い食事や運動不足の影響があり、メタボ的な生活習慣の人はリスクが高い。

 ところが、AYA世代のがんは、そういう影響がほとんどない上、がんの要因の一つである細胞の老化ともいえません。中高年のがんと違い、自己責任的な要素はとても少ないので、もっとサポートが受けられてしかるべきです。

 重要なのが、医療費の問題でしょう。乳幼児医療費助成制度や子ども医療費助成制度により、自治体が医療費の一部または全額を負担する制度があります。それに加えて小児がんの場合は、小児慢性特定疾病医療費助成制度が有効です。

 15~19歳は白血病や生殖細胞から発生する胚細胞腫瘍、性腺腫瘍、リンパ腫、20~29歳は胚細胞腫瘍、性腺腫瘍、甲状腺がん、30~39歳では乳がんや子宮頚がんといった具合に、AYA世代のがんは中高年のがんとは種類も異なり、専門医が少ない。

 そんな状況ですから、情報を得るには、有力ながん診療拠点病院である国立がん研究センター、国立がん研究センター東病院、静岡がんセンターなどを活用するといいでしょう。これらの病院にかかっていなくても、電話相談は可能です。子どもの学業を守るためにも親の医療費相談のためにも、万が一の時は連絡することです。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

関連記事