心不全の予兆の可能性あり 1カ月で体重2~3キロ増に注意!

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 昨年末、心不全の新しい治療薬が承認された。「SGLT2阻害薬」という、2型糖尿病の治療薬として使われている薬だ。2型糖尿病の有無にかかわらず、心不全に効果があることが大規模臨床試験で証明され、今回の承認につながった。心不全は近年患者数が急増し、2030年には患者数が130万人に達すると推計されているが、一般の人の認知度は低い。東大医学部付属病院循環器内科教授の小室一成医師に話を聞いた。

「心不全を簡単に表現すると、心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」

 心不全はステージA~Dの4つに大別される。ステージAは、心不全のリスク因子である高血圧、糖尿病、脂質異常症などがある段階だ。これらの治療が不十分で心臓病を起こすとステージB。ステージAとBは心不全をまだ起こしていない。

 ところが、ステージBで心臓病がこれ以上進行しないよう患者が生活習慣改善や薬物治療に取り組めばいいが、そうでない場合、急性心不全を発症するリスクが高くなる。急性心不全を起こすとステージCになる。

「急性心不全が1回で済めばいいが、再発、再入院を繰り返すと坂を下るように悪化していき、治療法がほぼなくなり、最終的には命を落とすステージDに至るのです」

 つまり心不全の治療で重要なのは、まずはステージAに上がらない。もしステージAになったら、ステージB↓C↓Dと進ませない。ところが実際は、そううまくいかない。

「ステージCで急性心不全を発症し、救急車で運ばれてくるほど苦しい思いをしても、心不全のタイプによっては数日で良くなり、1週間後には歩いて帰れるほどまで元気になります。そこで患者さんは『治った』と思ってしまう。しかし実際は、治療によって急性心不全から慢性心不全に移行しただけです。心不全を一度発症すると治らない。従来の生活習慣病に加え、心不全の治療にもしっかり取り組まないと、再発を繰り返すのです」

 この数年、心不全の治療薬は冒頭のSGLT2阻害薬を含め新薬が次々と登場。治療の選択肢は増えているのに、治療法がほぼないステージDに至ってしまうと、その恩恵を被れない。

■発症しない、再発させないためのポイント

 生活習慣を整え、心不全のリスク因子となる病気を抱えているなら、その治療を徹底的に行う。さらに、心不全対策で特に押さえておきたいポイントは2つある。

 まず1つは、体重が1カ月で2~3キロ増えた、夜中のトイレの回数が増えた、手足が冷えるなど、「これまでになかったこと」が起きたら急性心不全の予兆を疑う。

「特に体重の増加は心不全で水がたまった可能性があります。病院で心電図、レントゲン、血液検査をして、心臓にどれほど負担がかかっているか調べるべきです」

 心不全には「左室駆出率が低下した心不全=HFrEF(ヘフレフ)」と、「左室駆出率が低下していない心不全=HFpEF(ヘフペフ)」がある。高齢者に非常に多いのが後者のヘフペフで、心電図で異常が見つかりにくい。

「なんとか、ぎりぎりで心臓は動いているので、そのままいけば元気に活動できる。ところが暴飲暴食、睡眠不足、疲労、ストレスなどがあると、夜中に一気に具合が悪くなり、急性心不全を起こしてしまう」

 ヘフペフは、もう一つのヘフレフと違い、治療薬がない。暴飲暴食、睡眠不足、疲労、ストレスに日々気をつけるしか対策がない。これが2つ目のポイントだ。

 なお、SGLT2阻害薬はヘフレフに対し認可されたが、いまヘフペフに関しても大規模臨床試験が行われている。この結果次第では、ヘフペフ初の心不全治療薬となる可能性がある。

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