がんと向き合い生きていく

10年前に手術した腎臓のがんが右眉毛の上に転移して現れた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 遠隔転移のある腎がんに対し、「分子標的治療薬スニチニブ+原発巣手術群」と「スニチニブ単独群」を比較した試験では、前者の生存期間が良好の傾向が認められたと報告されています。

 これがたとえば遠隔転移のある大腸がんでは、大腸がんの原発巣を切除しても、切除しなくても、生存期間は変わらないという統計上の結果があります。原発巣を切除してもメリットはないというわけです。

 もちろん、個々の例によって違ってきます。大腸がんが大きく、腸閉塞を起こしそうな場合などでは、原発巣の手術が行われます。胃がんでも同じです。遠隔転移があると胃の手術をしてもあまりメリットはないので、胃原発巣の切除は行わないのが一般的です。

 また腎がんでは、原発巣を切除すると、転移したがんが小さくなってくる場合もあります。大腸がんや胃がんは、原発巣を手術しても転移したがんが小さくなることはありません。多くの腎がんの例で言えることではないのですが、腎がんは他のがんにはない不思議な面を示すケースがあるのです。

 転移がある腎がんでは、分子標的治療の後、原発巣の手術が可能であれば行って、その後も転移巣の手術、分子標的治療、放射線治療などが選択されます。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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