医者も知らない医学の新常識

老人斑の原因「アミロイド」が減っても認知症は治らない?

写真はイメージ

 アルツハイマー型認知症は認知症の代表です。この病気では、脳に「老人斑」という特徴的な構造が見られます。その中身を分析したところ、アミロイドという蛋白質が集まっているものであることが分かりました。アミロイドは正常な脳でも見られるものなのですが、それが異常に集まって塊になることで、脳の機能が低下すると考えられたのです。

 アミロイドが沈着してから20年以上経ってからでないと、認知症の症状は出ないと考えられています。では、このアミロイド蛋白を治療で減らすことができれば、認知症は改善するのでしょうか? そうした目的で、これまでにアミロイドの合成を阻害する薬や、アミロイドに結合して減らす抗体などが開発され、臨床試験が行われました。しかし、今のところアルツハイマー型認知症の予防や治療に対し、有効性が確認されたものはありません。

 今年のブリティッシュ・メディカル・ジャーナルという一流の医学誌に、これまでの14の臨床試験の結果をまとめて解析した論文が掲載されました。それによると治療により脳のアミロイド蛋白を減少させても、物忘れなどの認知症の症状に改善はありませんでした。確かにアルツハイマー型認知症ではアミロイド蛋白が増加するのですが、それは病気の原因ではないのかもしれません。認知症の克服には、まだまだ困難がありそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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