最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

目指すは“断らない診療所”どんな患者でも最後まで寄り添う

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 このまま患者さんを見放したら、ご近所の方などとのトラブルの果ての孤独死です。仮に道端での行き倒れなら救急車を呼ばれ搬送となる可能性は高い。それを未然に防げるからこそ存在価値を持つ在宅医療であり、その役割を自ら放棄することはできませんでした。そして、訪問する医師やスタッフの人数を変更するなどしてより多数の目を入れながら、この患者さんの在宅医療をなんとか続けられました。

 元料理人だった患者さん。好物だったラーメンや焼きそばも、自ら作って食べた時などは、おいしかったと感想を教えていただいたりもしました。

 最期まで自宅で自分らしく穏やかに過ごしてほしい。その結果、この患者さんも好きなものを作って食べ、好きな時間に寝て起きる生活で、いつしか暴言も収まり、最期は絶縁状態にあったお姉さんが見守る中、旅立たれていきました。

 このように私たち在宅医療は、病気を診ると同時にその患者さんの生活全体も診るチームなのです。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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