専門医が教える パンツの中の秘密

コンドームの落とし穴 使用期限や保管場所に注意しないと…

財布に入れると摩擦で傷んで破れやすくなるので注意
財布に入れると摩擦で傷んで破れやすくなるので注意

 コンドームは最も身近な「避妊具」であり、性感染症を予防する「医療器具」でもあります。しかし、どちらも確実に防げるわけではありません。使い方は簡単に思えるかもしれませんが、意外と勘違いしていたり、ちょっとしたミスが起こったりしやすいのです。

 各種避妊法による避妊効果を比較する際に、「パール指数」というものが用いられます。これは100人の女性が、その避妊法を使用して1年間で何人妊娠するかを表したもので、この指数が低いほど避妊効果が高いことになります。

 これによると、男性が不妊手術(パイプカット)をしている場合のパール指数は「0.1人」、女性が低用量ピルを飲んでいる場合には「0.27人」です。対してコンドームは「2~15人」。

 つまり、理想的(確実)な使い方をしていても失敗率は2%、普通に使用していると15%の失敗率です。

 なぜコンドームを着けているのに、避妊に失敗してしまうのでしょう。避妊に失敗するということは、性感染症も予防できないということです。それだけコンドームの扱い方は難しいといえるのです。

 では、どんなところに間違った扱いをしてしまう“落とし穴”があるのでしょうか。まずは、どんな場所に保管しているかです。

 コンドームには使用期限があり、期限が切れたものは破れやすくなります。普段は直射日光の当たらない、防腐剤のない場所に保管する。「いつでも、どこでも取り出せるように」と、財布に入れている人も多いようですが摩擦で傷んで破れやすくなります。

 携帯するなら、アルミ製の名刺ケースなどのハードケースに入れるようにしましょう。

 装着するタイミングは最も大切です。射精直前に装着しても、妊娠も性感染症も防ぐことはできません。いわゆる「ガマン汁」にも精子や病原体は含まれます。オーラルセックス(フェラチオ)を含めて、最初から最後まで装着しましょう。

 装着の仕方ですが、コンドームには表裏があります。ゴムが巻いている方を表にして、亀頭に密着させたら先端の細くなった「精液だめ」をつまんで空気を抜きます。空気が残っていると破裂の原因になります。そして、コンドームを指の腹で根元までゆっくり下ろしていきましょう。

 また、コンドームは油分に弱いので、油分を含むハンドクリームや軟こうが付着すると破れる危険性があります。潤いが足りない場合は、専用の潤滑ゼリーを使うようにしましょう。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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