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寝過ぎて頭が痛くなるのはなぜでしょうか…解消法はある?

脳神経外科の菅原道仁氏
脳神経外科の菅原道仁氏(提供写真)

 寝過ぎた後、頭痛がする原因には2つのパターンが考えられます。起床時の血管の伸び縮みが原因になる「片頭痛」と、寝るときの姿勢が悪かったために起きる「緊張型頭痛」です。

 片頭痛は、脳の血管が拡張することで血管を取り巻く三叉神経が引っ張られて起こります。人間は、日中は血液循環を高めるために交感神経が血管を収縮させ血圧を上げますが、眠ることで緊張が緩み血管が広がります。長く寝過ぎるとその分、血管が広がって血流が緩やかになるので、起床時の反動が大きくなります。

 寝起きに急に血流が増加することで血管が強く拍動し、三叉神経が引っ張られてズキンズキンと脈を打つような痛みが生じるのです。特に、頭痛持ちの方、寝不足で体に負担がかかっている方のほか、生理中、天候不順の日に寝過ぎると片頭痛を起こしやすくなります。

 一方、緊張型頭痛は筋肉の緊張が引き金になります。寝姿が悪いと長時間、首や肩に負荷がかかるためで、首の付け根から背中にかけて伸びる僧帽筋、後頭部から首の後ろに広がる後頚筋、こめかみにある側頭筋といった筋肉が緊張し、血流が滞るのです。それによって、筋肉が収縮と緊張を繰り返し、締め付けられるような重い頭痛が起こります。吐き気やめまいが生じるケースもあります。

 最近は、自宅での長時間のデスクワークやオンライン会議など同じ姿勢でパソコンに向かう方が多く、首や肩に疲労がたまりがち。猫背の方も、緊張型頭痛を発症しやすいです。

 対処法については、片頭痛の場合、頭を冷やすのが効果的です。血管は体温が下がると収縮するので、濡れタオルや氷枕を患部に当てて血管の収縮を促します。また、カフェインを取るのも有効です。血管の拡張をコントロールする働きがあるので、起床時に頭痛があればお茶やコーヒーを飲むといいでしょう。

 緊張型頭痛の場合は、首や肩周辺をぬるま湯で温めます。温めると筋肉の緊張がほぐれ、症状の改善が期待できます。頭部、首、肩をマッサージし、凝り固まった筋肉をほぐすのもいいでしょう。

 予防法は、枕の高さを調節すること。低めがよいので、バスタオルを枕として使うのがおすすめです。

 2つ折りから4つ折りにしたバスタオルを敷いて、頭部と体がまっすぐの状態で眠れるようにします。横向きに寝る方は、バスタオルを俵状に丸めて、肩と頭部の隙間を埋めます。寝る体勢を改善すれば緊張状態の筋肉がほぐれます。

 また、デスクワーク時のパソコンの位置も調整しておきましょう。モニターは目線から10度下を目安に設定すると、首や肩に負荷がかかりにくくなります。

▽菅原道仁(すがわら・みちひと)杏林大学医学部卒業後、クモ膜下出血や脳梗塞など緊急の脳疾患を専門とし、国立国際医療センター、北原脳神経外科病院で数多くの救急医療現場を経験。外来診療は月にのべ1500人ほどを診察。2015年に「菅原脳神経外科クリニック」を開業、院長に。20年7月からは医療法人社団「赤坂パークビル脳神経外科」理事長も務める。さまざまな医療現場で活躍するスーパードクターたちが出演の公式YouTubeチャンネル「SuperDoctors -名医のいる相談室-」でも解説します。

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