50代独身男性と80代老親のコロナ闘病記

<7>精神的に限界の母に医師の指示で好物のカステラを差し入れ

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写真はイメージ(C)PIXTA

 55歳で糖尿病を抱える私と85歳になる母親は、ともに新型コロナウイルスの感染が発覚し入院となった。私は治療のおかげで回復し無事に退院したが、母は症状が改善せずに入院が続いている。

 母の入院9日目。レムデシビル点滴投与3日目。微熱などの症状は続く。採血の結果、炎症反応を示すCRP値が3・6に悪化。完全な肺炎になると9か10になるので、いまが分水嶺、踏ん張りどころ。レムデシビルを6日目以降ももう1クール5日間継続することが確定。重症化への懸念とレムデシビルの安心感が交錯する。母は、重症化の危険や薬の効果を理解しているのだろうか。

 入院10日目。栄養と水分を摂れていない。体力がつかない。栄養の点滴よりも、直接食べたほうが回復も早い。好物を食べて、少しでも腸の動きを良くし、免疫力を上げることが大切だ。脱水が進むリスクも考えると、点滴も選択肢だ。

 治療の一環で、食べ物の差し入れを医師が許可してくれた。じつはこの時、医師は母が精神的に限界になっていることを鑑み、翌週半ばごろ、レムデシビル投与2クール目の途中で切り上げての退院も視野に入れていた。ただ、未だ熱が下がらず、食欲もない。CRP値も上昇中だ。安全策でレムデシビル延長投与も決定したばかり。フライング気味に退院し、その後に重症化する症例もあり、難しい判断だ。

 母の好物であるカステラ、野菜ジュース(紙パック)、ゼリー飲料など飲みやすいものもたくさん買い込んだ。いつもの警備室前で看護師さんと待ち合わせた。

看:「お母さまのお箸は持ってきてくれましたか?」
私:「いや、すぐ売店で割り箸を買ってきます」

 箸のことは看護師さんに言われていたわけではなかったが、母が入院時に箸を持参しなかったことをすっかり忘れていた。入院中に割り箸20本を売店から母に届け、それで済んだと思っていた。入院が長期化し、割り箸がなくなってしまったのだ。考えてみれば、一昨日荷物を届ける時に気が付いてもいい話だ。コロナ後遺症で思考力が完全でないのか?

■追加のステロイドと抗生剤投与も決断

 入院11日目。レムデシビル投与4日目。胸部CTと採血検査があり、肺の白い影は濃くなっている。範囲も広がっている。早めにレムデシビル追加申請したのは大正解。予断を許さない。

 入院14日目。レムデシビル投与7日目。医師から連絡があり、母の血中酸素量が時に少なくなるので、本日からステロイドと抗生剤投与を開始するという。ステロイドは錯乱状態を起こすリスクがあるが、微熱が続く状態もつらい。母は精神的にも参っている。苦渋であるが最善の選択肢と理解した。

 入院15日目。レムデシビル投与8日目。ステロイドと抗生剤投与2日目。母をメールで励ます。
「あと数日。がんばろう」
「退院したらおいしいものを食べよう」

 今日は母のリクエストであずきアイスクリームを差し入れた。

(つづく)

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