上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

活動的で質の高い生活にはより良い「視力」が欠かせない

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 今年の正月休みに右目の手術を受けて実感したのは、より質の高い生活を送るためには「しっかり見える」という状態が欠かせないということです。

 もともと私は強度の近視で、老眼も重なった40代後半からは遠近両用の多重焦点コンタクトレンズを使っていました。それが、1年ほど前から右目の視野に小さな“ずれ”が生じ、去年の11月ごろには暗くなってくると物が見えづらくなり、右目の視力が0・2くらいまで落ちてしまいました。

 加齢によって硝子体が変化して、網膜の中心部である黄斑に小さな丸い穴が開いてしまう「黄斑円孔」という疾患が原因でした。また、少しだけ白内障もあったため、順天堂医院の眼科で眼内レンズを入れる手術を受けたのです。

 手術を決断するに当たって、「もしもこのまま回復がおぼつかないようなら、外科医としての寿命は終わりかな」と考えていました。目の衰えが引き金になり、手術から引退する外科医は少なくありません。いまは手術の際に装着する拡大鏡やヘッドライトといった補助機器が大きく進化しているため、以前よりも視力低下の影響は小さくなっていますが、それも限界があります。何より自分で満足できる手術の“仕上がり”が望めないかもしれないと思うようなら、メスを置かなければなりません。ですから、今回の目の手術は、自分の“外科医生命”が懸かっていたのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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