50代独身男性と80代老親のコロナ闘病記

<8>母はようやく退院するも足腰が弱って車いすが必要な状態に

写真はイメージ
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 新型コロナウイルスに感染して入院中の85歳になる母親は、なかなか症状が改善せず治療が続いている。

 母は、「頑張りも苦しい」「早く退院したい」「生きるのに疲れる」「元気になりたい」「1人になってもしっかり生きてね」などと精神的に参っている様子だ。ただ、レムデシビル、ステロイド、抗生剤の併用の効果で、コロナの諸症状がゆっくりと回復している。血中酸素濃度も悪くない。しっかり食べている。睡眠もとれている。なのに、母自身には肺炎が悪化していると感じるのはなぜだろう。弱音が続く。不憫になった。

 母の入院17日目。レムデシビル点滴投与10日目(終了)。ステロイドと抗生剤投与4日目。肺の影は憎悪している。新しい病変も見られる。まだ退院後に体調急変の可能性がある。炎症反応の指標であるCRP値も依然高値。退院して環境が変わるのも心配だ。急いで退院して良いことはなさそうだ。心配なので、レムデシビルをもう1クール5日間の投与を希望した。これは「10日間が最大」とのことで叶わなかった。

 入院22日目。ステロイドと抗生剤9日目。胸部CTは肺の影が薄く、範囲も狭くなった。CRPも0・15と大幅に改善。ステロイドと抗生剤も翌日で10日間の区切りとなり、ついに母の退院が決定した。

 看護師さんから連絡があった。

「退院おめでとうございます。尿とりパッドを病棟在庫から使用したので、明日朝10時のお母さまの退院時に持参ください」

■見事なチーム医療に感謝

 入院23日目朝10時。たくさんの荷物が乗った台車とともに、防護衣の看護師さんが車いすで母を連れてきた。車いすが必要なほど、やはり相当足腰は弱っているのだ。

「長い間、母子ともにお世話になり、ありがとうございました。まだまだコロナは続きます。ご活躍を祈ります。くれぐれもご自愛ください」

 看護師さんに伝え、病院を後にした。

 コロナとの闘い。われわれの母子闘病は、私が10日間、母は23日間に及んだ。それぞれの闘病生活にゴールが見えない時期があった。医療従事者は、変異ウイルスの拡大や第4波への備え、ワクチン接種など、ゴールのないマラソンを走り続けているかのようだ。医療現場が非常事態の戦場であることが、この母子闘病で真に理解できた。

 ひとり暮らしの高齢者であったら、このコロナはさらに厄介な病だ。ホテル隔離や自宅待機中に亡くなる方もいる。コロナが続く限り、さまざまな社会的問題も続く。

 病院の主治医とコロナ病棟看護師、感染対策室は、しっかりとわれわれ母子に、とりわけ高齢で要介護の母に向き合ってくれた。これらは、まさしく高齢者への医療・介護という社会的問題の解決にもつながる見事なチーム医療だった。心からの感謝を申し上げたい。(おわり)

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