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へそのゴマの正体は?掃除して取ってもいいのでしょうか

消化器外科医の石黒成治氏
消化器外科医の石黒成治氏(提供写真)

 お腹の真ん中にあるへそは、臍帯(=へその緒)が取れた痕です。へその緒は、胎児が母親から栄養や酸素を供給してもらうための血管で、出産と同時に役割を失います。へその緒が切られるとその部分は穴が開いた状態になりますから、くぼみとして残ります。底が見えるほど浅いくぼみ、そして深いくぼみ、またはくぼみきらない「デベソ」と呼ばれる形状があります。いずれも個人差があり、切ったときの状況によるので、ある意味形状は“生まれつき”といえます。

 へそのゴマは、このくぼみにたまったアカ、皮膚や皮脂の分泌物です。へそは意識して洗う人が少ないので、長年にわたってたまりがち。そのゴマに雑菌が混じると強烈な異臭を放ちます。

 私たち外科医は、腹部の手術前には必ずへそのゴマの処置をします。ゴマがたまった状態でメスを入れると手術創(手術後の傷)が感染するリスクがあるからです。とくに高齢者の方の処置をすると、数十年分のパチンコ玉のようなゴマが出てくるケースがあります。もちろん、医学的に「へそのゴマは取ってはいけない」と言われるのは迷信で、基本的にはへそを掃除しても問題はありません。

 ただし、過度にこすったり、ゴマを取りすぎて傷が付き赤く腫れ、細菌が繁殖し化膿する「臍炎」を引き起こすケースがありえます。泌尿器科や外科で処置をしてもらったり、抗生物質の軟膏を塗ることで治りますが、治療を受けて1カ月以上たっても症状が改善しなかったり、臍炎を繰り返す場合は「尿膜管遺残症」が根本原因である可能性があります。

 へそと膀胱は尿膜管と呼ばれるチューブ状の管でつながっています。尿膜管は、胎児が尿を母体に流す役割を果たし、通常は生前に閉鎖します。これが生後も閉じずに残っている状態を尿膜管遺残と言い、尿膜管の切除手術が必要になります。50、60代で突然へそが化膿して発覚するケースもありますから、へそが腫れたり、うんだりしたらまずは診察を受けてください。

 個人で掃除するなら、オリーブオイルでふやかした綿棒で、へそのくぼみの中を湿らせると簡単にゴマを取れます。なかなか取れないときは、綿球をオリーブオイルでひたひたにし、あおむけに寝転がって、へその上に10分ほど置いておくとすくいやすいでしょう。掃除は頻繁にする必要はありませんが、へそから見えている範囲のゴマはその都度、取り除くと清潔に保てます。

▽石黒成治(いしぐろ・せいじ) 1973年生まれ。名古屋大学医学部卒業後、国立がんセンター中央病院で大腸がん外科治療のスキルを取得。名古屋大学病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院で大腸がん外科の専門医としてがん治療に従事。2018年から予防医療を行うヘルスコーチとしての活動を開始し、YouTubeで情報を発信している。また、さまざまな医療現場で活躍するスーパードクターたちが出演の公式YouTubeチャンネル「SuperDoctors -名医のいる相談室-」でも解説します。

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