コロナ第4波に備える最新知識

ワクチン先進国の感染者の高止まりは「気の緩み」が原因?

ワクチン接種開始後も感染者が増えるブラジル
ワクチン接種開始後も感染者が増えるブラジル(C)ロイター

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進む国々での新規感染者の高止まりが続いている。

 人口930万人のイスラエルは昨年12月上旬からワクチン接種が開始。3月25日時点ですでに人口の50・07%が2回目の接種を終え、55・96%が1回目の接種を終えた。

 ところが、米国ジョンズ・ホプキンス大学の統計資料によると3月25日の新型コロナ新規感染者数はイスラエルで817人。感染ピーク時より大幅に減ったことからワクチン効果が強調されている。しかし、人口1400万人の東京の同日の新規感染者数は394人で倍以上多い。

 イスラエルに続きワクチン接種が進んでいるとされる人口1000万人のアラブ首長国連邦(UAE)は2043人、昨年12月上旬から接種が始まった人口3・3億人の米国では、6万7443人となっている。

 12月下旬からワクチン接種が始まり、3月16日時点で1900万人の国民のうち500万人が1回目の接種を終えた南米チリはどうか。

 3月に入ってから新規感染者は5000人を超える日が続き、18日の新規感染者は7257人と6000人を突破した。

 接種が始まった1月16日に新規感染者数が1万5144人だったインド(人口13・5億人)は3月10日には2万人を突破。25日には5万9118人となった。同じく1月から接種が始まったブラジル(人口2・1億人)は2月1日に2万4591人だった新規感染者数が3月25日には10万158人になっている。

 こうした状況を受け、世界的に権威のある医学雑誌である英国医師会発行の「BMJ」の投稿欄に英国在住の科学者から「インドはワクチンや封鎖なしで新型コロナウイルス感染症をほぼ管理したため、世界的な注目を集めていた。にもかかわらずワクチン接種が始まって1カ月ほどして感染者が増え始めた。インドの近隣諸国であるパキスタン、バングラデシュでも増えている。ブラジルでも同様の傾向がある。しかし、科学者たちは、冬が過ぎた最近の時期の突然の急増の明白な原因を特定することができていない。人口密度の高い開発途上国では緊急の注意が必要だ」との投稿が寄せられた。

■ワクチンが変異株を拡大させたとの見方も

 重症化ばかりか感染抑制にも力を発揮するといわれるワクチンを接種しているのに、どうして新規感染者が思うように減らないのか。

 ひとつの考えとして「気の緩み説」がある。ワクチン接種したことで、もはや自分は感染しない、他人に感染させないとの過信が生まれた。それが人々の気の緩みにつながり、行動が大胆になり感染に拍車をかけたという説だ。

 ワクチンを打ったことで従来種が抑えられた分だけ感染力が強くワクチンの影響を受けにくい変異株が増えた説、効かないワクチンを打ったために増えたように見えた説、ワクチン自体が体内に潜んでいたウイルスの変異を促したとの見方もある。

 ただし、いずれも仮説に過ぎず、証明されたものは何もない。ハッキリしていることはワクチンを接種した国の中には新規感染者が増えたり、高止まりする国があり、いまはワクチンさえ打てばすべて丸く収まるとは思えない状況だ、ということだ。

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