身近な病気の正しいクスリの使い方

アトピーは新薬だけでなく「薬の使い方」も変わってきている

写真はイメージ
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 前回、アトピー性皮膚炎の治療では選択肢が増えてきていることを紹介しました。アトピー性皮膚炎の病態の基本となっている「炎症」を抑えるための新しい薬が次々と登場しているのです。

 そうした新薬が開発されている一方、治療は主に「ステロイド外用薬」や「タクロリムス(免疫抑制剤)外用」で行われるのが一般的です。もっとも、外用薬による治療も変わってきました。以前は症状が表れたときに薬を使う「リアクティブ療法」が一般的でしたが、現在は「プロアクティブ療法」と呼ばれる薬の使い方が主流になってきているのです。

 プロアクティブ療法とは、症状が表れる前から予防的に薬を使う方法です。ひどい症状が治まった場合でも、減量して薬を使用した後、隔日、週2回、週1回……といったように期間を空けていくことで、より使用量を減らしながら、皮膚の良い状態のキープと予防を同時に行います。再発の多いアトピー性皮膚炎の場合、リアクティブ治療ではうまくコントロールしにくいため、現在では、徐々にプロアクティブ治療が推奨されるようになってきました。

 プロアクティブ療法で重要なポイントは、「ゆっくりと薬の量を減らしていくこと」「ステロイドなどの薬を使わない日でも毎日保湿は欠かさず行うこと」です。再発(症状の悪化)が起きてしまった場合には、再度しっかりと薬を使うところからリスタートします。

 ステロイド薬は誤ったイメージで「怖い」と思われがちですが、むしろ怖いのは、その誤解によって誤った薬の使い方をすることです。誤った使い方によって薬の効果が得られない、あるいは再発を繰り返してしまうと、正しく薬効が評価できないことにつながります。

 慢性疾患であるアトピー性皮膚炎は薬と長く付き合う必要があります。薬を正しく理解し、正しく使うことが必須です。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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