中年以降の男性にとって、加齢に伴う一大関心事は「ED(勃起障害)」ではないでしょうか。朝立ちがなくなったり、性交の途中に「中折れ」したりします。何よりショックなのは「男性としての自信を失う」ことです。「愛する女性を満足させられない」という失望感による精神的ダメージは大きなものです。
そんな男性の悩みを解消する画期的な薬として一大センセーションとなったのが、1998年の「バイアグラ」の登場です。日本でも翌年から使用可能になりました。バイアグラは、もともとは狭心症の治療薬として研究・開発されました。
しかし、臨床試験を行っても被検者の狭心症にあまり効果がありませんでした。それで臨床研究が中止となり、被検者から残った薬を回収しようとしたところ、男性の被検者の多くはなかなか返そうとしませんでした。なぜかといえば、バイアグラを飲んでも心臓に流れ込む血液はあまり増やしませんでしたが、ペニスに流れ込む血液量を増やすという効果(副作用)があったからです。この偶然の発見によってバイアグラはED治療薬として誕生したのです。
その後も国内のED治療薬は「レビトラ」「シアリス」と3剤が認可され、今ではジェネリック(後発薬)も数多く発売されています。これらのED治療薬は、すべて「PDE5阻害薬」という種類の薬になり、ED患者の70~80%に効果が認められています。
しかし、勘違いしてはいけないのは、PDE5阻害薬は勃起させる薬ではなく、勃起を維持させる薬だということです。ですから飲んだだけでは勃起はせず、AVを見たり、ペニスを刺激したり、性的刺激がなければ薬の効果は表れません。
では、どのような作用で勃起を維持するのでしょうか。勃起するときは陰茎海綿体の中で「サイクリックGMP」という筋肉を弛緩(しかん)させる物質が増えます。しかし、この物質はずっと存在するのではなく、「PDE5」という酵素によって分解されてしまいます。サイクリックGMPが分解されてしまうと、陰茎海綿体の筋肉が収縮して勃起が維持できません。PDE5阻害薬は、勃起を消えさせる酵素の働きを邪魔する薬なのです。
また、PDF5阻害薬の効果は勃起の維持だけではありません。長く服用していると、全身の血管の収縮・拡張を調節する血管内皮の働きを良くして、血管を若返らせるのです。それにPDE5阻害薬は、排尿障害を起こす前立腺肥大症の治療薬としても認可されています。中高年男性の強い味方となる薬なのです。
専門医が教える パンツの中の秘密