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新型コロナウイルス変異株はどれくらい危険か 専門誌で解析

英国に由来する新型コロナウイルスの変異株
英国に由来する新型コロナウイルスの変異株(国立感染症研究所提供)

 新型コロナウイルス変異株の感染例が国内でも報告されるようになってきました。同ウイルスの変異株は大きく英国型、南アフリカ型、ブラジル型に分けることができます。欧州で感染が拡大している英国型変異株の感染力は強く、既存型ウイルスと比べて43~90%高いという研究報告もあります。また、アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンは、南アフリカ型の変異株には予防効果が小さい可能性も報告されており、変異株の特徴や感染拡大への影響に関心が集まっています。

 そんな中、英国型変異株の死亡リスクに関する研究論文が、英国医師会誌の電子版に2021年3月9日付で掲載されました。この研究では、2020年10月1日から21年1月29日までの間に、新型コロナウイルスに感染した30歳以上の患者10万9812人(平均46・3歳)が解析対象となりました。既存型ウイルスに感染していた5万4906人と、英国型変異株に感染していた5万4906人が比較され、PCR検査による感染確認から28日以内の死亡率が検討されています。なお研究結果に影響を与えうる年齢、性別、民族性などの因子について、統計的に補正を行い解析されました。

 その結果、新型コロナウイルス感染症に関連する死亡リスクは、既存型ウイルスと比べて英国型変異株で64%、統計的にも有意に高いことが示されました。このリスクはまた、既存型ウイルスが英国型変異株に置き換わることで、1000人当たりの死亡者が2・5人から4・1人に増加することを意味しています。

 幸いにも英国型変異株については新型コロナウイルスワクチンが依然として有効であるという報告もなされていますが、ワクチンが現段階で普及していない日本では、変異株の感染拡大に注意が必要かもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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