科学が証明!ストレス解消法

性格は気候に影響される 平均気温2度上昇で集団間暴力50%増

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 コロナ禍以降、都心から撤退し、郊外や地方に拠点を移す企業が少なくありません。個人においても、2拠点生活や移住といった選択が定着化し、東京一極集中の時代から大きく変わろうとしています。また、“Work(仕事)”と“Vacation(休暇)”の造語であり、新たなワークスタイルをつくり出す「ワーケーション」を政府が推進するなど、これからの時代は、ひとつの場所にとどまる働き方や暮らし方とは違う新しいライフスタイルが浸透しそうです。

 移住するなら、第2の拠点をつくるなら――。皆さん、思い思いのこだわりがあると思いますが、昨今、「人間の性格は暮らしている地域の気候に影響されるのではないか?」という研究が注目されています。移住やセカンドライフ、子育てを考えている人からすれば、覚えておいて損はない科学的情報でしょう。

 北京大学のウェイ氏らが行った研究(2017年)では、中国の59の都市出身の5500人と、1万を超える自治体のアメリカ人166万人に対してアンケートを行い、出身地の気候的特性に関連するデータを分析しました。その結果、「個人の人格が、彼らが暮らしていた環境の平均気温に影響されている可能性がある」と結論づけたのです。

 たとえば、快適な気温(22度前後)で育った人々は、極端な気温で育った人々に比べて、社交性や情緒的安定性、自己成長に関する項目で高いスコアを記録したといいます。ただし、一概にはくくれないため、気候の変化による性格の変化の度合いに対して、研究チームも「今後の調査を待つ」と締めくくっています。

 この手の研究は少なくなく、ケンブリッジ大学の社会心理学者・レントフロウ氏らの研究(08年)では、50万人以上からなる統計データをもとにグレート・プレーンズ(ロッキー山脈東麓の平原)からアメリカ最南部まで広がるエリアは、「友好的でクリエーティブ」な地域。西海岸地域とロッキー山脈周辺などは「リラックスしていて、クリエーティブ」な地域。中部大西洋岸地域などは「気まぐれで奔放」な地域といった傾向を発表しています。

 たしかに、日本に暮らすわれわれも、南国の人はのんびり屋さんが多く、北国の人は寡黙で建設的な人が多いという具合に、地域による気質の違いを感じることは少なくないと思います。地域による性格差は万国共通なのでしょう。

 ただし、今後は地球温暖化の影響も関係してくると指摘されています。カリフォルニア大学バークリー校公共政策大学院のショーン氏の論文(13年)によると、気温上昇もしくは異常降水という形で気候が変化。たとえば平均気温が2度上昇すると、集団間暴力は50%以上増加すると分析しています。

 もちろんこれは地球規模の話ですから、特定の場所で気温が上昇するからといって暴力や紛争が増えるというわけではありません。ですが、気候が人間に与える影響は無視できない、という点では示唆に富んでいます。もし移住する、2拠点目を探す際は、自分の性格を踏まえて、地域の気候や気質も把握することを忘れないように。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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