進化する糖尿病治療法

「活動量計」が歩数を増やす 1日2000歩増で病気リスク低下

仲間がいれば継続しやすい
仲間がいれば継続しやすい

 手首や足首に着けることで、心拍数や消費カロリーなど体に関するさまざまなデータを計測できる活動量計を、日々使っている人もいるのではないでしょうか? オーストラリアのシドニー大学の研究で、これら活動量計やスマホの運動アプリを使うことで、ウオーキングの1日の歩数を増やせることが明らかになりました。

 研究グループは、活動量計と運動アプリを使ったランダム化比較試験28件を解析。すると、活動量計と運動アプリを同時に使った人は、そうでなかった人に比べて1日の歩数が平均1850歩増えたという結果でした。研究者は「歩数を1日2000歩増やしただけでも心血管疾患、2型糖尿病、がんなどの慢性疾患のリスクを下げられる」と述べています。

 日本でも、スマホの無料アプリがいくつもあります。運動内容や消費カロリーを記録でき運動継続のモチベーションを上げるもの、豊富なエクササイズから自分のレベルに合わせたトレーニングが選べるような運動関連のアプリのほか、体重を管理できるもの、食事の記録で摂取カロリーを正確に知ることができるもの、栄養士からダイエットのアドバイスが届くものなど、生活習慣改善を目指している人なら大いに活用すべきです。

 活動量計やスマホのアプリなどがいいのは「見える化」できる点です。

 漫然と運動や食事改善を行っていては、長期継続は難しいでしょう。特に、肥満や糖尿病、そのほかの生活習慣病になった人は、もともとが運動習慣がなく、食事内容が偏っていたり摂取時間が不規則だったりする人が大半ですから。

「見える化」は、さまざまな形で行えます。腕立て伏せを今は10回しかできないけど、1カ月後には20回を目指すなど具体的な目標を立てるといいのです。

 ポイントは、いきなり大きな目標を立てないこと。「1年後に腕立て伏せ100回実現!」とするより、「膝つきの腕立て伏せで、1カ月後には胸が床につくくらいまでできるようにする」とした方がいい。

■仲間がいれば継続しやすく

 ダイエットも同様ですね。元の体重にもよりますが、「1カ月で1~2キロ減」くらいの緩やかな減量計画の方が挫折しませんし、リバウンドも起こりにくい。これも「見える化」が成功の秘訣で毎日同じ時間帯に体重や体脂肪率の測定を行う。記録を取るともっといい。「昨日は食べすぎたから体重が増えた。今日は食事量を調整しよう」というふうに自然となりやすいのです。

 直視したくないポッコリお腹を毎日鏡に映して写真に撮り、「かっこいいフィットネスウエアを着られるようにする」を目標にした人も。その人(女性)は減量目的で友人とスポーツジムに通い始めたのですが、最初は全身を隠せるぶかぶかのTシャツと短パン。そのうちノースリーブのぴったりめのシャツとレギンス(スパッツ)。ジム通い3年目の今はおへそが見える短いウエアとレギンスと、“変化”を遂げました。お腹がへこみ、筋肉が浮き出るにつれ、「お腹を見せたい欲求」が出てきたそうです。

 これまでに挫折を何度も繰り返している人にお勧めしたいのは「周囲を巻き込むこと」。運動もダイエットも生活習慣改善も、仲間がいれば継続しやすくなります。

 今はコロナの影響で複数人でのウオーキングやランニングなどはできませんが、「オンラインジム」という手もあります。Zoomなど顔が見える状況でエクササイズができ、インストラクターさんが参加者それぞれの名前を呼んで応援してくれるものなら、「仲間と一緒」という気分を味わえます。

 スポーツジムにリアルに通うより安価で、自宅でいつでも参加できるのもいい。

「リアルのスポーツジムは会費だけ払ってずっと幽霊会員だったけど、オンラインなら続けられた」という声も聞きます。

 ぜひ試してみてください。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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