がんと向き合い生きていく

がんを告知されたシングルマザー 入院中に娘をどうすれば…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Nさん(34歳・女性)は4歳の娘、ゆいちゃんと2人で暮らしています。毎朝、保育園にゆいちゃんを預けてから、近所のスーパーで働いていました。

 3カ月前から時々不正出血があり、B病院の婦人科を受診しました。すると、担当医から「子宮頚がん」と告げられ、手術を勧められたのです。

「え! 入院ですか……」

 Nさんは絶句しました。1週間後の外来診療の際、返事をすることにして、承諾書などの書類をもらって帰ることにしました。

 診察室を出たNさんの頭の中は、自分の病気のことよりも「入院中に娘をどうするか」が占めていました。病院を後にして、お迎えのため保育園に向かう途中では、「仕事を休んだら収入がなくなる。治療費はどれくらいかかるのだろう……」といった不安が頭に浮かんできます。

 保育園に着くと、ゆいちゃんが走ってきて「ママー」と言いながらスカートに抱きついてきました。その瞬間、ホッと緊張が解けたのか、どっと涙があふれてきました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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