病気を近づけない体のメンテナンス

首<上>頚椎症には痛みナビ体操が効く リハビリ専門医が推奨

写真はイメージ
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 首や肩の凝りを感じているうちに、症状が進んで首に痛みが出てくるケースがある。そうなると首の動きも悪くなり、上を向いたり、振り返ったりする動作がスムーズにできなくなる。このような症状が表れてきたら、「頚椎症」の可能性がある。

 リハビリ専門医である「お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック」(東京都千代田区)の銅冶英雄院長が言う。

「頚椎症とは、7つある首の骨(頚椎)の変形や骨と骨の間にある椎間板のズレや潰れ、靱帯が厚く硬くなるなどの『変性』によって痛みが生じる病気です。首や肩に凝りや痛みを感じるだけで、腕や手の痛みやしびれといった神経症状がないものを、狭い意味での頚椎症といいます。レントゲン上で頚椎の変形が強い場合は、変形性頚椎症と呼ばれることもあります」

 さまざまな変性の中でも、頚椎症が起こる主な原因は、骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板が傷むことだ。椎間板は軟部組織で、椎間板の外側には線維輪というコラーゲンの壁があり、その中央部分にゼラチン状の「髄核」がある。髄核は軟らかいので線維輪の中で形を変えることができ、首を反らすと髄核が前に移動し、椎間板の後ろ側が潰れ、前側が開く。反対に首を曲げると、髄核が後ろに移動し椎間板の前側が潰れ、後ろ側が開くという動きをする。

 しかし、首の無理な姿勢が続くと線維輪が耐えきれなくなって亀裂が生じる。線維輪の内側に亀裂が入っても神経がないので、この時点では痛みは感じない。ところが、さらに悪い姿勢が続くと亀裂が徐々に外側に広がっていき、神経がある線維輪の外側まで亀裂が達すると痛みを感じるようになる。一度、亀裂が線維輪の外側まで及んでしまうと、亀裂に沿って神経が線維輪の内側にまで伸びていくので、髄核のズレが外側までいかなくても神経を刺激して、首の痛みを感じるようになるのだ。

「椎間板は血流の乏しい組織なので、栄養が届きにくく、一度亀裂が生じると、なかなか治りません。しかし、首の痛みが出たら、とりあえず痛み止めを飲むというだけの対処法はお勧めできません。頚椎症の骨の変形は運動療法では治りませんが、骨の変形の原因である椎間板のズレは運動療法で戻すことができます。髄核のズレを戻せば首の痛みを改善することができますし、筋肉の収縮による肩凝りも治ります」

 このようなことから、銅冶院長は、頚椎症が疑われる患者に自ら考案した痛みを和らげる運動療法(痛みナビ体操)を勧めている。

 患者にとっては頚椎症の問題部分を詳しく調べるよりも、現在生じている“痛み”を、どうしたら改善させられるかを知ることの方が重要だからだ。

「痛みナビ体操」を行う前に、まず「首をどの方向に動かすと痛みが改善するか」を調べて、自分の痛みのタイプを把握する必要がある。そのタイプによって体操のやり方が異なるからだ。ここでは、頚椎症の約80%を占める「後方改善型」と、約15%を占める「前方改善型」の見極め方を紹介する。

「後方改善型」には、2つのタイプがある。それを調べるには、首を後ろに動かす2つの運動を行ってみる。

①首引き運動

 背筋を伸ばして顎を少し引いた姿勢から、顎を思いっきり引いて、戻す。このとき、首に力を込めて、顔を真っすぐ前に向いた状態を保つのがコツ。

②首反らし運動

 背筋を伸ばして顎を少し引いた姿勢から、顎を突き出さないように注意しながら、ゆっくり上を向き、戻す。戻すときも顎を突き出さない。

 頚椎が硬くなっていると、1回目にかえって痛みが強くなるときがあるので、1回で判断せず、それぞれ10回程度繰り返してみる。

 首引き運動で痛みが改善するようなら「後方改善型の首引きタイプ」、首反らし運動で改善するようなら「後方改善型の首反らしタイプ」となる。

「前方改善型」も「うつむきタイプ」と「顎出しタイプ」の2つのタイプがある。確認の仕方はこうだ。

③うつむき運動

 背筋を伸ばして顎を少し引いた姿勢から、顎を喉に押し付けるように、顔をゆっくりと下に向けて倒し、戻す。

④顎出し運動

 背筋を伸ばして顎を少し引いた姿勢から、顎をゆっくりと前に出し、戻す。顎を突き出すときに、背筋が曲がらないように首だけを前に出す。

 次回は、この4つのタイプに合わせた「痛みナビ体操」のやり方を紹介する。

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