ほかのがんはどうでしょうか。肺や肝臓を部分切除した場合は、残った部分が元の機能を補うように肥大して、回復することが多い。もちろんケース・バイ・ケースですが、たとえば30%切除したからといって、機能が3割減にならないのはそのため。大腸がんもそうで、人工肛門になっても、体力面での影響はほとんどありません。
体力に影響があるのが何かというと、胃がんと食道がんです。ソフトバンク球団の王貞治会長のように胃がんで胃を全摘したり、食道がんで胃を食道のかわりに使ったりすると、激ヤセします。小澤征爾さんは食道がんの手術後、「着られる服がなくなった」とこぼしたそうです。
激ヤセの原因は、胃に備わっている食べたものをためてタイミングよく十二指腸、小腸へと送り出す機能が損なわれ、消化吸収が悪くなるため。こうなると、体力の低下が心配です。ちなみに、現役世代がこれらのがんになると、スーツの新調代に出費がかさむといわれています。
Dr.中川 がんサバイバーの知恵