病気を近づけない体のメンテナンス

首<下>専門医考案 手を使うタイプ別「痛みナビ体操」の実践

写真はイメージ
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 首や肩にコリや痛みが生じる「頚椎症」。

 前回は痛みやコリを和らげる運動療法(痛みナビ体操)を行うにあたり、自分がどんなタイプ(4つ)の頚椎症なのか調べる方法を紹介した。そのタイプによって体操のやり方が異なるからだ。

 頚椎症の約80%を占める「後方改善型」には2つのタイプがある。背筋を伸ばして顎を少し引いた姿勢から、顎を思いっきり引いて、戻す。この運動をして痛みが改善するようなら「首引きタイプ」。背筋を伸ばして顎を少し引いた姿勢から、ゆっくり上を向き、戻す。この運動で痛みが改善するようなら「首反らしタイプ」となる。

 頚椎症の約15%を占める「前方改善型」にも2つのタイプがある。背筋を伸ばして顎を少し引いた姿勢から、顎を喉に押し付けるように、顔をゆっくりと下に向けて倒し、戻す。この運動で改善すれば「うつむきタイプ」。背筋を伸ばして顎を少し引いた姿勢から、顎をゆっくりと前に出して、戻す。この運動で改善すれば「顎出しタイプ」となる。「痛みナビ体操」を考案した「お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック」(東京都千代田区)の銅冶英雄院長が言う。

「頚椎症のタイプを調べる運動は、1回で判断せず、それぞれ10回程度繰り返してみて確認してください。また、痛みの改善は『痛みの範囲』『痛みの強さ』『首の動きやすさ』の3項目の変化を見ます。どれか1つでも改善すれば、それが自分の頚椎症のタイプになります。3項目すべてに変化が見られなければ、運動療法では効果が期待できない首の痛みの可能性もあります」

 自分のタイプが確認できたら、そのタイプに合わせた「痛みナビ体操」を行うことになるが、その前に体操の適応判定を行う必要がある。次に挙げる項目に該当する人は、体操を行わず医療機関を受診した方がいいという。

①手足を動かしにくい(手足のマヒ)②おしっこを出しにくい(膀胱のマヒ)③事故や転倒の後(骨折や脱臼の可能性)④関節リウマチ⑤高熱がある(化膿性脊椎炎の可能性)⑥進行がんになった(がん転移の可能性)。

「痛みナビ体操」は道具を使うバージョンもあるが、ここでは自分の「手」を使うやり方を紹介する。体操を行う基本姿勢は、足を肩幅に開いて背筋を伸ばして立つ。視線は真っすぐ前へ。頚椎は顎が出ないように気をつけ、軽く顎を引くようにして、頭が体の真上にくるようにする。4つのタイプに合わせた体操のやり方はこうだ。

■後方改善型の首引きタイプ

【首引き体操】①基本姿勢から、左右どちらかの手で、首を前に倒したときに一番出っ張る骨「第7頚椎棘突起」の横を押さえる。②顔は真っすぐ前を向いたまま、二重顎になるよう意識して、首を後ろにグッと引く。このとき首を押さえている手は前方へ押し出して、カウンター(逆)の力をかける。そして基本姿勢に戻す。

■後方改善型の首反らしタイプ

【首反らし体操】①基本姿勢から、左右どちらかの手で、第7頚椎棘突起の横を押さえ、顎を後ろに引く。②顎を少し引いたまま、ゆっくり上を向く。このとき顎を突き出さないように気をつける。③ゆっくりと首を戻していき、顎を少し引いた基本姿勢に戻す。

■前方改善型のうつむきタイプ

【うつむき体操】①基本姿勢で、左右どちらかの手を頭のてっぺんに置き、肘が顔の真ん中にくるようにする。②顎を喉から胸に押し付けるように、ゆっくりと頭を下げてうつむく。③下げきったら、ゆっくりと基本姿勢に戻す。

「背中が丸まっていたり、顎が前に出ていたり、悪い姿勢で体操をしても首の痛みの改善は望めません。それだけでなく、動かしたくない頚椎の下部が曲がってしまうと、かえって症状が悪化してしまうケースもあるので注意してください」

■前方改善型の顎出しタイプ

【顎出し体操】この体操は手を使わない。①基本姿勢で、視線は真っすぐ前へ。②次にゆっくりと顎を前に出す。胸椎が前に曲がらないように要注意。③顎を前に出しきったら、ゆっくりと基本姿勢に戻す。

「どの体操も10回1セット(3分程度)として、痛みが強い場合は1日10セット(1~2時間おき)行ってください。痛みがそれほど強くなければ、1日5セット(3~4時間おき)でもかまいません」

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