以前であれば、難しくて手術できない、あるいは手術はできても一部の身体機能を犠牲にしてしまう可能性が高かったでしょう。しかし、技術の進歩によってそうした問題を起こすことなく手術できるようになったのです。
心臓血管外科の分野にとどまらず、こうした新しい機器や材料、技術が登場するたび、私は常に「ひょっとしたら心臓手術に応用できるんじゃないか」と考えています。今回の手術でも活躍した3Dプリンターを使う方法は、そもそもはカテーテルで血管内治療を行う循環器内科で採用されているものでした。それを外科手術でも取り入れたのです。
■得意ではない分野も取り入れる
自分が得意ではない分野の技術についても、「自分が得意とする領域に応用できないだろうか」と常に考えています。たとえば、カテーテルを使った血管内治療については、私はまったくタッチしていません。しかし、自分の“畑”である外科手術に血管内治療をプラスすれば、患者さんにとってさらに満足度が高い治療が実施できることが明らかなら、手術で血管内治療は経験がある若手に任せ、それ以外の部分を自分が担当するといった役割分担をしてより良い手術を実践します。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」