こういった患者さんの満足よりも自己満足を優先する外科医というのは、患者さんにとって不利益でしかありません。かつての自分を振り返ると、自己満足を優先していた部分がなかったとは言えないのが正直なところですが、それをしっかり反省して、今は患者さんにとっていちばん満足度が高くトラブルが少ない治療を何よりも優先しています。
そのためにも、自分の専門領域以外でも新しい技術に対するアンテナを常に張り、いかに応用できるかを考え続けることは欠かせません。新しい機器や技術というものは、登場した直後は高額だったり、用途が限定されているものです。ですから、すぐには心臓手術に応用できない場合がほとんどなのですが、ある程度広く使われ始めたタイミングで、ふと「これは使える」とひらめくのです。
発明家・エジソンの「天才とは1%のひらめきと99%の努力のたまものである」という有名な言葉があります。解釈には諸説あって、「ひらめきがなければ努力は無駄になってしまう」という意図で発言したという人もいますが、私は「ひらめきを得るためには努力が必要だ」と考えています。ほとんどすべてと言えるほど努力に努力を重ねたうえで、そのご褒美として初めてひとつの確かなひらめきが与えられる。だからこそ、私はずっと日々の努力を続けています。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」