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汗っかきと多汗症の違いはどこにあるのか 受診の目安は?

皮膚科医の鶴田葵氏
皮膚科医の鶴田葵氏(提供写真)

 日常生活や仕事に支障をきたすほど汗をかく疾患は「多汗症」と呼ばれます。人間の体にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺の2つの汗腺があり、そこから汗が出るのですが、多汗症に関連するのは主にエクリン汗腺で口唇などを除きほぼ全身に存在し体温調節の役割を担っています。全身または、頭部、顔面、手のひら、足の裏、脇といった局所で大量の発汗が起こって、日常生活に支障をきたす症状が出る場合、多汗症を疑います。

 多汗症については「日本皮膚科学会ガイドライン」で定義づけられています。①最初に症状が出るのが25歳以下②左右対称に同程度の異常発汗がみられること③睡眠中は発汗が止まっていること④1週間に1回以上多汗のエピソードがあること⑤家族歴がみられること⑥日常生活に支障をきたすこと。このうち2項目以上が当てはまれば多汗症と診断されます。

 一般的には10~20代の若年層が「異性と手をつないだときに多量の汗をかく」「テスト時に汗で鉛筆を持てなくて困った」と病院に相談に来て診断されるケースが多いですが、30代以上の方も昔からこれらの項目の症状に悩んでいる場合はまず皮膚科を受診してください。

 治療は基本的に保険適用で外用薬の塗布や内服薬を処方されますが、医院によってはイオントフォレーシス(肌に微弱な電流を流し、薬剤を皮膚の深部まで浸透させる療法)や交感神経をブロックする手術があります。

 一方、大人になって突然大量に汗をかくといった場合、別の要因が隠れている可能性が高いといえるでしょう。いわゆる汗っかきの方は、体温調整の機能が敏感な体質なので、気温の上昇や緊張時に大量に汗をかくのです。肥満の方は汗をかきやすいですが、汗っかきだと思っていたら、糖尿病が発覚する場合もあります。糖尿病によって末梢神経に影響が出て自律神経のバランスが崩れることで体温調整が難しくなってしまうのです。

 また、「甲状腺機能亢進症」(バセドー病)の方も、多汗症に似た症状が出て病気が発覚するケースがあります。甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、甲状腺ホルモンには新陳代謝を活発にする働きがあり、汗の分泌量が増えるのです。

 大人になって急に多汗症のような症状がみられるようになったら、血液検査などの精密検査を受けてください。原因となる基礎疾患を見つけ出し、治療すれば汗に関しては自然に落ち着くことがほとんどです。

▽鶴田葵(つるた・あおい)奈良県立医科大学医学部医学科卒業後、神戸大学医学部付属病院などを経て大阪市北区の美容皮膚科・皮膚科にて院長を務める。2020年5月、最新機器や良い治療を地元・奈良にも取り入れたいという思いで、西大寺駅前A皮膚科を開院。日本皮膚科学会皮膚科専門医。また、さまざまな医療現場で活躍するスーパードクターたちが出演の公式YouTubeチャンネル「SuperDoctors -名医のいる相談室-」でも解説します。

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