コロナ第4波に備える最新知識

免疫を回避する?東大科研グループが「新たな変異株」を発見

「まん延防止等重点措置」適用対象は10都府県に
「まん延防止等重点措置」適用対象は10都府県に(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス感染症の第4波襲来で大騒ぎだ。政府は16日、「まん延防止等重点措置」の適用対象に埼玉、千葉、神奈川、愛知の4県を追加。既にスタートしている東京、大阪などに加え、適用は10都府県となった。

 急拡大の原因は新年度で人の往来が増えたことに加えて、変異株が広がったためだといわれる。

 変異株は少ないウイルス量でも感染するといわれており、これまではあまり見られなかった、10~40代の新規感染者が急増している。

 そんななか、米カリフォルニア州を中心に猛威を振るう変異株は、およそ60%の日本人が持っている免疫システムを一部回避する可能性のある「L452R」という変異を持っていることが日本人の研究グループにより明らかになった。

 論文は東京大学医科学研究所の佐藤佳准教授らのグループがまとめ、正式な審査を受ける前の論文を公開する「プレプリントサーバー」と呼ばれるシステムを利用して公開されている。研究グループの一員である東海大学医学部分子生命科学講師の中川草氏が言う。

「ヒトの免疫には、体内の異物に即応する自然免疫と、一度体内に侵入した病原体の情報を学習して攻撃する獲得免疫があります。獲得免疫にはさらに大きくわけると『抗体』と呼ばれるウイルスをターゲットとする物質をつくり出すタイプのものと、ウイルスに感染した細胞を直接撃退する『細胞性免疫』と呼ばれるタイプがあります。今回、我々が発見したことは、『L452R』という変異を持ったウイルスは日本人を含む東アジア、東南アジア地域の人類集団の細胞性免疫から一部逃れる可能性があるということです。加えて、この『L452R』という変異は感染力が向上することも細胞実験で示唆されました」

 コロナウイルスはおよそ2週間に1度程度の頻度で変異が蓄積しているため、これまで数万もの変異株が誕生したと考えられている。

 変異の中で特に危険であることがわかっているものの多くが、新型コロナウイルスの表面にある突起物(スパイク)を構成するSタンパク質のなかで、ヒトの細胞表面にある受容体と呼ばれるタンパク質と結合する部位に起きた変異だ。

 現在注目されている変異株、いわゆる英国型、ブラジル型、南ア型もそれらの部位に変異があり、3つ全ての変異株に共通している「N501Y」変異は感染効率の向上に寄与していると考えられていて、ブラジル型、南ア型で見られる「E484K」は抗体からの免疫から逃避に関わっているとわかってきた。

 仮に、これらの変異株に「L452R」が加わったらどうなるのか?

「確かに『N501Y』変異や『E484K』変異と同時に『L452R』変異を持っている変異ウイルスは確認されています。一方で、現在のところその頻度は低いと考えられ、また実験的にその変異の効果について検証されていないため詳細はわかりません。一方で、インドを中心に『L452R』変異と『E484Q』変異を持つ変異ウイルスが見つかっているとの報告もあり、そのあたりはとても興味を持っています」

 ちなみに、「L452R」を持った変異ウイルスは日本国内では4月、沖縄で1人の感染が確認されているが、それはたまたまゲノム研究で発見されただけで、検査キットのない現在は、その広がりを検出できないという。

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