巻き爪の痛みとサヨナラできる正しい治療法 専門医に聞く

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「約10年前から巻き爪の専門外来を開いていますが、正しい対策や治療が患者さんに浸透しているとはとても言えない」――。こう話すのは、ウェブサイト「専門医と学ぶ巻き爪・陥入爪治療の相談室」を立ち上げ、巻き爪の啓蒙活動を行う埼玉医科大病院形成外科の簗由一郎医師。解消法を聞いた。

 爪の端が内側に巻き込んでくる状態を「巻き爪」という。放置すると爪の端が皮膚に陥入して炎症が生じる「陥入爪」に至る可能性がある。

 巻き爪の対策・治療は大きく分けて「市販品によるセルフケア」「医療機関などでの爪が巻かないようにする矯正治療」「手術」の3つ。

 市販品によるセルフケアとしては、テーピングで周囲の皮膚が爪と接触しないようにする方法や爪が皮膚に食い込んでいる部分にコットンを挿入して痛みを和らげる方法などがある。

「クリップ型の巻き爪矯正器具もあります。たとえば私が開発に関わった『ネイル・エイド』は厚い爪や変形が強い爪にも装着可能で、患者さん自身がつけ外しでき、何度も使えます」

 一方、医療機関の矯正治療は現在、ワイヤを用いて変形を矯正する治療が主流。陥入爪であれば薬物治療や爪甲を部分的に除去する外科的処置などで炎症を鎮める。

 ところが、外科的な処置や矯正治療を積極的に行う医療機関は少ない。手間がかかるが保険点数が低いのが一因だ。

「近年はフットケアサロンなど医療機関ではない場所で、セルフケアで使うような商品なども用いながら、医療機関で行う矯正治療よりはマイルドな矯正やケアを行うところも増えています。巻き爪治療に積極的な医療機関が少ないことを考えると、非医療機関の利用も個人的には悪くないと考えています。ただ、もっと別の治療が必要な患者さんに、その情報が伝わっていないケースが多々見受けられるのです」

 巻き爪が起こる原因には、遺伝的要因と環境的要因がある。

 親が巻き爪であれば、子供もそうであることがよくある。そこに環境因子が加わり、巻き爪になる。環境因子では、先の細いヒールやサイズの合わない靴による爪への圧迫、歩き方、深爪が挙げられる。

「半年ほどの矯正治療で巻き爪でなくなっても、遺伝的要因が強かったり、環境的要因が改善されないままでは、また巻き爪が起こり、『矯正治療↓再発』を何度も繰り返すのです」

■根治させる方法も

 問題は、巻き爪の矯正治療は保険適用外という点。医療機関でもそれなりの金額がかかるし、非医療機関ではそもそも保険適用の範疇外だ。

「私は、何度も矯正治療を繰り返している人は、手術を検討した方がいいと考えています。患者さんにも矯正治療、手術の双方のメリット、デメリットを話し、選んでもらう。しかし、非医療機関で長く巻き爪の矯正を受けていた患者さんの話を聞くと、手術の説明がなされてなく、手術という選択肢があること自体知らなかった人が少なからずいるのです」

 一方、巻き爪の手術治療を積極的に行う医療機関を最初に訪れた患者の中には、「矯正治療では再発を繰り返す。手術を」と言われ、おじけづいて別の医療機関や非医療機関を転々とする人も。

「巻き爪治療でベターな流れは、まずは市販品を使ってのセルフケアかセルフ矯正。次に医療機関か非医療機関での矯正。それでダメなら手術。手術ではフェノール法という方法が一般的で、蛋白腐食作用のある薬剤を用いて皮膚に食い込んでいた部分の爪が生えてこなくなり、巻き爪の根治が可能です。フェノール法は保険適用で、外来ででき、術後の痛みもなく歩いて帰宅できます」

 いずれにしろ、自分に合った治療を選ぶことが大切。それによって、巻き爪のつらさと手を切れた人はたくさんいる。

 巻き爪のセルフケアや治療などについては、簗医師のホームページ(https://medical-media.jp/)が役に立つ。

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