身近な病気の正しいクスリの使い方

五月病が長引くようなら漢方薬を試すのも選択肢のひとつ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 スギ花粉も落ち着き、新年度が始まりました。新生活で起こりやすいのが「五月病」です。五月病は「病」といっても医学的な診断名ではなく、新入生や新入社員といった環境が大きく変化した人が、5月ごろに生じやすい「精神の不安定状態」や「やる気の低下」を指します。

 医学的には、軽度のうつ症状や適応障害と診断されるものです。「うつ病」ではないので注意してください。適応障害は、環境変化など急性のストレスの後に早期に発症するのに対し、うつ病は数カ月にわたる慢性のストレスの後に発症するのが一般的です。ですから、五月病は適応障害または「うつ症状」ということになります。

 時間とともに回復してくるのが一般的ですが、症状が長引くようなときには、専門医に診てもらった方がよい場合もあります。五月病は、成人の学生や働いている人だけでなく子供でも発症します。本人が新しい環境に身を置くわけではなく、たとえば親など周囲の環境が変化した場合でも症状が表れるケースもあります。また、本人から苦痛を訴えるということは比較的少ないので、周りの人が気づいてあげることも早期発見のためには重要です。

 五月病の対処法は、ストレス発散、リラクセーション、誰かに相談して解消するのであればベストといえます。しかし、それができずつらい気持ちが長引く場合には、専門医に相談してカウンセリングや抗うつ薬などの治療を受けるのもよいかもしれません。

「病院にはかかりたくない」という場合の選択肢のひとつとして、漢方薬を試してみる手もあります。柴胡加竜骨牡蛎湯という漢方は、緊張やイライラを緩和し睡眠の質を改善することで、軽いうつ症状や意欲の低下などに効果があるとされています。五月病かも……と思ったときには検討してみるのもよいでしょう。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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