点眼薬は1日5~6回まで 使いすぎで目の不調が負の連鎖に

適正回数は5~6回
適正回数は5~6回

 眼精疲労や目の充血などで目薬をしょっちゅう使っている人は、それがかえって目の不調を招いている可能性がある。専門医に聞いた。

 コロナ禍で増えているのが、目の角膜のトラブルだ。東邦大学医療センター大森病院眼科教授の堀裕一医師は、「VDT作業(パソコンなどを用いてする作業)による目の酷使、マスクドライアイ、精神疲労による影響が三重苦となって、角膜にダメージを与えている」と話す。

 VDT作業に集中すると、まばたきの回数が通常時の4分の1程度になり、1分間に5~6回となる。すると目の表面にある角膜を守っている涙が乾きやすくなる。

「また、仕事への集中で交感神経が優位になり、涙が出にくくなります。涙が乾き、涙の量も減れば、涙の量はより少なくなり、角膜が傷つきやすくなります」

 コロナ以降、注目されているのがマスクドライアイだ。吐いた息がマスクの上の部分から漏れ、それが目の表面に当たり、目が乾く。

「さらに、コロナで精神疲労を抱えている人が増えました。精神的な不安やストレスは交感神経を優位にして涙の量を少なくし、質を悪くすることは研究で明らかになっています」

 角膜は傷ついても自己修復機能があるが、「目の酷使」「マスクドライアイ」「精神的疲労」という三重苦で修復が追いついておらず、自覚している以上に角膜の状態が悪くなっていっている人が少なくないと、堀医師は指摘する。

「文字がぼやける、目が常に乾いてショボショボする、目がかすむ、痛みを感じる、ゴロゴロ感がある、寝ても疲れ目が解消しないという場合は、ただの疲れや加齢のせいではなく、角膜の傷の可能性があります。悪化する前に適切なケアが必要です」

 具体的には、VDT作業中は「目線を下げる」「エアコンの風が顔や目に直接当たらないようにする」「加湿器を使う」「1時間作業したら5分休む」。また、副交感神経を優位にして涙の分泌を促すために入浴やストレッチなどで心身をリラックスさせる。点眼薬を使う。

■適正回数を超えると、目が乾きやすく

 ただ、この点眼薬の使い方を間違えている人が結構いる。

 今年3月に行われた「コロナ禍の点眼薬使用実態調査」(20~60代男女638人対象。「現代人の角膜ケア研究室」が実施)によれば、点眼薬使用者の5割近くがコロナ禍で点眼数が増加。症状がひどい時は、点眼薬使用者の26%が適正回数(5~6回)より多くさしており、「回数の上限にはこだわらず、症状を感じるたびにさしている」人が約5割いた。

 この調査を監修した杏林大学医学部眼科学教授の山田昌和医師が言う。

「目の不調を感じるたびに点眼薬をさす人が多く、1日20回以上という人もいました。しかし、点眼薬はさせばさすほどよいわけではありません。点眼薬1滴で涙の5倍ほどの量があり、それを1日に何度も使うと涙が洗い流されてしまううえ、涙の乾燥を防ぐ涙の油の層も破壊されて涙の質が悪くなるのです」

 大半の点眼薬には防腐剤が含まれているということも念頭に置いておくべき。防腐剤は点眼薬の品質保持のために必要な成分で、角膜の傷がひどくない人では問題ない。

 しかし角膜の傷がひどい人、規定の回数を超えて何度もさす人の場合、症状を悪化させてしまう恐れがある。

「私がお勧めしているのは、朝起きてすぐ、昼食後、15時、夕食後に各1滴ずつ。それ以外にリフレッシュさせるために1~2滴というように考えれば、適正回数内に収まります。症状がひどい人は防腐剤無添加の点眼薬を選び、それでも改善しなければ早めに眼科を受診すべき」(山田昌和医師)

 目がひんやりする点眼薬や充血対策の点眼薬は、角膜への刺激が強め。日常使いするのではなく、「今日は疲れているから」「スッキリしたいから」といった時だけ使う方がいい。

 目の不調は仕事や日常生活に支障を来す。正しい対策を講じたい。

関連記事