オンラインによる歯列矯正 医院に通わず平均3カ月で終了

「Oh my teeth」提供
「Oh my teeth」提供

 歯並びが悪いと虫歯や歯周病などにかかりやすくなるが、歯の矯正治療は時間がかかるのがネック。しかし最近、歯科医院に通わずにでき、平均3カ月で終了する矯正が登場し注目されている。

 歯の矯正には主に、矯正装置を歯に取り付け、そこにワイヤを通して徐々に歯を移動させる「ワイヤ矯正」と、少しずつ形を変えたマウスピースを自分で付け替えて歯を移動させる「マウスピース矯正」がある。前者は矯正装置が固定されており、後者は取り外し可能となる。

「ワイヤ矯正では、歯科医院で矯正装置の調整などを行うので、1カ月に1回程度の通院はやむを得ません。一方、マウスピース矯正は自分でマウスピースを付け替えるので、通院回数は頻回ではない。しかしそれでも、数カ月に1回は通うのが一般的です。それを何とかできないかと考え、確立したのがオンラインを用いたマウスピース矯正です」

 こう言うのは、「Oh my teeth表参道矯正歯科」の西尾万樹歯科医師。

 流れはこうだ。初回だけは「Oh my teeth表参道矯正歯科」に赴き、問診、歯のチェック、口腔内写真撮影、パノラマX線検査などを受ける。さらに3Dスキャナーで歯型をスキャン。歯型はリアルタイムで3D化され、それを見ながら歯科医から説明を受ける。

 診断結果は、歯科医からのコメントと共に3日以内にLINEへ。ここまでは無料。矯正開始を決めたら、矯正のゴールが分かるシミュレーションが1週間前後で、そして2週間後には矯正用のマウスピースが送られてきて、矯正開始となる。

■挫折者の声を反面教師にしてシステムを確立

 通常は年単位でかかるマウスピース矯正が、「Oh my teeth」では平均3カ月で済むのは、ひとつは前歯だけの部分矯正だから。そしてもうひとつは、矯正を途中で挫折しないための工夫がなされているからだ。前出の西尾歯科医師が言う。

「マウスピース矯正は自分でしっかりマウスピースを装着しなければならず、その時間は1日20時間以上にも及びます。装着時間がこれより短いと、前歯だけの矯正であっても平均3カ月ではとても終わらない。最初の想定期間より延びたために途中で挫折する人もいて、その割合は1~2割といわれています」

 オンラインによるマウスピース矯正のシステム構築にあたり、「Oh my teeth」代表の西野誠さんが、マウスピース矯正の挫折者に理由を聞いたところ、大半が「モチベーションが維持できない」と回答。歯科医からも、20時間以上のマウスピース装着を守ってもらうのは困難という話を聞いたという。

 そこで、モチベーション維持につながる専用アプリを開発。毎日歯科医や歯科衛生士から前日の装着時間を確認するLINEが送られ、患者が申告した装着時間がグラフで表示される。それをもとに、残り何日で終了するかを表示。自分の歯が最終的にどのような形になるのか3Dデータで確認でき、また現在矯正を行っているほかの人の装着時間などもチェックできるので連帯感を得られ継続しやすい。

「マウスピース装着写真撮影用の専門スマホアプリも提供しており、定期的に患者さんに歯の写真を送ってもらっています。これによって歯の状態をオンラインで確認できます。相談や質問には、歯科医や歯科衛生士が、時にZoomも用いたオンライン診療を活用して対応しています」(西野代表)

 結果、正しい装着をほとんどの人が守れ、矯正が適切なスピードで進み、早い人なら1カ月で終了できるのだという。値段は期間に限らず、一括払いで税込み33万円。

 ただし、前述の通り前歯の矯正のみが対象。また、矯正後、その歯型を維持する「保定装置」は、従来の歯列矯正と同様に年単位で必要だ。

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