息子夫婦から送られてくる孫の動画を見ていると、「もしかしたら、この子が大きくなった時に読んでくれるかもしれない」「爺はこんなことを考えていた。こんな本を読んでいた。こんなことを書いていた……そんな興味を持ってくれるのでは」などと考え、「この別刷りは、この本は残しておこうか」という思考が頭をよぎるのです。
そんな爺になった私が思い出すのは、乳がんで亡くなったFさん(65歳)という女性患者のことです。入院していた病室の枕元には3歳くらいのお嬢さんの写真が飾ってあり、こんなお話をされていました。
「私のがんは全身に進んでしまったし、死ぬのが怖いとか、生きていたいとか、そんなふうには思いません。ただ、この孫と別れるのがつらい。こんなかわいい孫とは別れたくない。小さな子は3歳までに恩を返してくれると聞いたことがありますが、それは本当だと思います。孫が世界で一番かわいいのです。こんなにかわいいと思うのは、やはり血がつながっているからでしょうか?」
がんと向き合い生きていく