■生命は受け継がれていくことに救いがある
宗教学に造詣の深い哲学者の梅原猛さんは、日本緩和医療学会特別講演で次のような話をされました。
「私たちの生命の中には永遠の生命がやどり、それが子孫に蘇っていく。自分は死んでも、遺伝子は生きていると考えれば、生命は連続的なものと科学的に考えることができる。この考えに立つと、がんの末期の人、死にゆく人々に対峙する時、慰めの心を持って対話ができるのではないか。この世の生命は受け継がれていくことに救いがある。生命は連続したものだという立場から自然な対話ができる」
梅原さんの「この世の生命は受け継がれていくことに救いがある」という言葉が、今になって身にしみるのです。
34年前、私が担当していて胃がんで亡くなったSさんの奥さまから、先日メールが届きました。その当時、奥さまは大変苦労されたと思うのですが、幸せそうに「今、孫たちは大学生4人、高校生3人、そして一番チビさんもこの4月から中学生です」と報告してくださいました。一緒に送っていただいたご家族の集合写真を目にして、「こんな幸せな方もおられるのだ」と思いました。
がんと向き合い生きていく