頑固な「便秘」を確実に治す方法 消化器専門医が教える

高齢者の便秘は水分不足も原因
高齢者の便秘は水分不足も原因(C)日刊ゲンダイ

 国内初の慢性便秘のガイドラインが発刊された2017年以来、便秘治療に取り組む医師が増えている。一方で、一般の人の間では「たかが便秘」という意識が強く、ひどくならないと病院へ行かない人もいる。慢性便秘は、50歳以上では死のリスクも考えなければならない病気だ。大腸がんやパーキンソン病などの重大病の症状として便秘が挙げられ、便秘でトイレでいきむと血圧が上昇し、脳血管障害を起こしやすくなる。米国の15年にわたる生存調査では、便秘がある人はない人に比べて生存率が低かったという結果が出ている。

「患者さんから『便秘がある』という話が出たら、まずは全員に大腸カメラを勧めます」と言うのは、埼玉・蓮田病院理事長の前島顕太郎医師(消化器外科)。大腸がんが疑われるからだ。

「大腸がんではなく、ほかの消化器疾患でもないことを確認した上で、生活習慣改善と薬物治療の便秘治療を行います」(前島医師=以下同)

 そのやり方は、年齢、性別、食生活、便の硬さや排便の頻度などによって人それぞれ。だが、大まかなパターンがある。

「高齢になると便秘になりやすい。高齢者で便が硬く、週1回くらいしか出ない患者さんの場合、生活習慣改善より先にまず便を出す作業が必要。その際、強い下剤を最初に使うと、硬い便が大腸で詰まってしまい腸閉塞を起こしかねない。この場合は、酸化マグネシウムで便を軟らかくしたり、浣腸で硬い便を出すところから始めます」

 早い人では2~3日くらいで便が軟らかくなる。そこから生活習慣改善になるが、高齢者の大半は水分摂取不足も便秘に大いに関係している。心機能や腎機能を調べ、その人にとって安全な量の水分摂取を勧める。

 一方、腹痛や腹部の不快感もあり、過敏性腸症候群(IBS)が疑われる場合、酸化マグネシウムは出さない。

「IBSの患者さんは、便はむしろ軟らかい。酸化マグネシウムを使うと下痢してしまうので、便の水分バランスを調整する薬(ポリカルボフィルカルシウム)や整腸剤を一般的に出します」

 特に若い女性に多いのが、市販薬の刺激性下剤を長年使っている人。

「刺激性下剤は長期間使用していると手放せなくなります。しかし、いきなりやめると便秘でつらい。そこで酸化マグネシウムと併用しながら、少しずつ刺激性下剤の量を減らしていきます」

 酸化マグネシウムは、高マグネシウム血症や不整脈などのリスクがあるといわれているが――。

「実際に長年処方していて、適正量を守っていることもありますが、不整脈などが起きたケースは経験していません」

 便秘の治療薬は長年新薬が出ていなかったが、2012年にアミティーザが発売され、17年にリンゼス錠、18年にグーフィス錠、モビコール配合内用剤と発売された。

「これら4つの薬は効果が高い非常にいい薬ですが、効きすぎて下痢をしてしまうケースがよくある。また薬剤によっては副作用で気持ち悪くなる患者さんもいます。酸化マグネシウムのように細かく量を調整できればいいのですが、それも難しく、臨床現場では使いづらい場合もあります。とはいえ、患者さんにとってベストな薬は違うので、様子を見ながら処方していきます」

 ただし、薬はあくまでも補助的に使うもの。

「重要なのは生活習慣改善。水溶性と不溶性の食物繊維が豊富な野菜、キノコ類、海藻類、果物を毎日取る。納豆やキムチといった発酵食品も取るよう勧めます。さらには食事を規則正しい時間に食べ、睡眠を十分に取る。便意を我慢しない。これで自然に排便できる人も多いです」

 便秘解消ですっきりした体で一日を過ごそう。

■おすすめドリンク

「これを朝飲むと15分くらいでトイレに行きたくなります」と話すのは、パーソナルトレーナーの吉岡詩織さん。おすすめなのは、オートミール、バナナ、塩分不使用の素焼きのナッツ類、低脂肪牛乳、プロテインで作ったドリンクだ。

「オートミール、バナナ、ナッツから水溶性・不溶性食物繊維が取れますし、朝食代わりにもなるほど腹持ちがいい。プロテインでタンパク質も摂取できます」

 ミキサーさえ用意すれば、一気にかくはんできるので、手軽なのもポイント。野菜料理などを何品も作れないという人は、ぜひこれで。

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